足場工事における資材置き場の選び方を、資材置き場のメリット、選ぶ際のポイント、注意点などに分けて解説いたします。
資材置き場のメリット
足場工事を行う業者は、リース会社に足場部材を借りて仕事をする業者と、自社で足場を所有して仕事をする業者の2種類に分けられます。
自社で足場を所有していると、足場を保管するスペースが必要になります。
リースのメリットもいくつかありますが、今回は自社で足場を所有し、資材置き場を持っていることで得られるメリットを3つ紹介します。
まず1つ目は、フットワークが軽くなり、迅速に対応できるという点です。
足場工事の工程で、全てが予定通りに進むという工事ばかりではありません。
追加工事や、工事内容の変更などで突発的に部材が必要になる場合があります。
そのような時に資材置き場を自社で持っていると、素早い対応をすることができます。
リースに比べると、フットワークの軽さは圧倒的に違ってくるので、対応の速さは資材置き場を持つメリットの1つになります。
2つ目は、工事の受注から完了まで、自社のみで管理できるという点です。
リースのみで足場工事をしていると、リース会社に部材の手配をしなくてはなりません。
しかし、自社で資材置き場を所有していると、数量の確認、材料出し、準備、搬入まで一括で行えます。
リース会社と連携するメリットもありますが、他社を通さずに全て自社でできるとスムーズな工事を行うことができます。
3つ目は、工事費用を抑えられるという点です。
資材置き場を所有していない場合、部材を1つの工事の度に毎回リースしなくてはなりません。
リース料には、リース会社の管理費や、利益が乗せられています。
もちろん、その分工事費用は高くなり、利益の幅を持たせることが難しくなります。
しかし、資材置き場を所有していればリース会社に支払う必要がないので、費用を抑えることができます。
資材置き場を選ぶ時のポイント
資材置き場を選ぶ際、市街化調整区域を選ぶことがポイントです。
資材置き場の求められる条件として、一般的に以下の項目が考えられます。
- トラックが出入りするため、面している道路が広い
- 高速道路の出入口が近い、または主要道路が近い
- 騒音のトラブルにならないように、住宅から離れている
- 資材置き場自体が平坦である
- 土地の値段が安い
市街化調整区域は、これらの条件を満たしている場合が多く、資材置き場に適しています。
市街化調整区域とは、都市計画法における「市街化を抑制すべき区域」のことです。
この区域では、開発行為や都市施設の整備は原則として行えません。なので、新しく建築物を建てたり、増築することを抑える区域となります。
しかし、資材置き場は都市計画法によると開発行為に該当しないため、プレハブ小屋などの建築物を設置しなければ、市街化調整区域に資材置き場を設置することができます。
都市計画法
第四条
この法律において「都市計画」とは、都市の健全な発展と秩序ある整備を図るための土地利用、都市施設の整備及び市街地開発事業に関する計画で、次章の規定に従い定められたものをいう。
12 この法律において「開発行為」とは、主として建築物の建築又は特定工作物の建設の用に供する目的で行なう土地の区画形質の変更をいう。
引用:e-gov
また、資材置き場にプレハブ小屋などを設置したい場合は、既に設置してある土地を借りたり、購入すれば再度「開発許可」を取る必要はありません。
これらの理由から、資材置き場を設置する際、市街化調整区域を選択することがひとつのポイントです。
畑を資材置き場にする場合
田んぼや畑などの農地を資材置き場にする場合、「農地転用」が必要になります。
農地転用とは、農地を農地以外の方法で利用することをいいます。
まずは、農地の定義について解説いたします。
農地とは、耕作を目的とされた土地、あるいは地目が農地とされている土地を農地と言います。
定義に関しては、農地法で定められています。
農地法
第二条
この法律で「農地」とは、耕作の目的に供される土地をいい、「採草放牧地」とは、農地以外の土地で、主として耕作又は養畜の事業のための採草又は家畜の放牧の目的に供されるものをいう。
引用:e-gov
農地転用する場合、各市町村に設置されている農業委員会や、都道府県知事に許可を貰わなければならない場合があります。
農業委員会は、農地転用にふさわしいか否かを審査しています。毎回、個別に審査しているため、どのような判断で審査しているのかなどの基準は公開されていません。
しかし、農地転用を申請する際に記入する「農地転用許可申請書」の申請理由部分が重視されていると言われています。
そのため、申請理由欄を記入する際は、農地転用が必要であるという理由をできるだけ具体的に書きましょう。
そして、その土地が市街化区域内であれば農業委員会に届け出を出すだけで転用することが可能です。
しかし、その土地が市街化調整区域にある場合は都道府県知事の許可が必要となります。
届け出や、許可を貰うこと自体に費用はかかりませんが、必要な書類を用意するのに手数料がかかります。
行政書士などの外部に委託する場合、農業委員会への届け出であれば5万円前後、都道府県知事の許可を貰うのであれば10万円前後かかります。
また、農地転用には毎月締切日が設けられています。
各市町村によりますが、期日を逃してしまうと最大で1ヶ月ほど申請が遅れてしまうので期日にはご注意してください。
農地転用許可が順調に進んでも早くて1ヶ月、遅くて3ヶ月以上かかる場合があります。
資材置き場を選ぶ時の注意点
資材置き場を選ぶポイントで、市街化調整区域のメリットを解説しましたが、デメリットも解説いたします。
資材置き場を選ぶ際は、メリットとデメリットを考えて慎重に選んでください。
インフラが整っているかどうか
市街化調整区域は、人が住む土地として整備されていないため、電気、水道などのインフラが整っていない可能性が高いです。
上水道は、市町村の水道局に相談して引き込み工事を行うことができます。
しかし、工事の規模によっては工事費用が膨大になってしまう場合があるので注意が必要です。
下水道は、浄化槽や仮設トイレで対応しているケースが多いです。
浄化槽の場合、濾過後の放流先を確保する必要があります。
仮設トイレの場合、定期的にバキューム車でタンクの中を取り替える必要があります。
電気を引き込む場合、電力会社の相談窓口に問い合わせを行い、近所に電柱があるか、線路容量などを調べます。
新たに電気を引く際は、私有地と公道の境目に電気を供給するための設備を設置する必要があります。
設置する場所などによって料金が変わるので、インフラ状況はしっかりと確認しましょう。
調整区域は建物を建築できません
上記でも軽く触れましたが、市街化調整区域には基本的に建物を建てることができません。
都市計画法第34条では以下のように定められています。
都市計画法
第三十四条
前条の規定にかかわらず、市街化調整区域に係る開発行為(主として第二種特定工作物の建設の用に供する目的で行う開発行為を除く。)については、当該申請に係る開発行為及びその申請の手続が同条に定める要件に該当するほか、当該申請に係る開発行為が次の各号のいずれかに該当すると認める場合でなければ、都道府県知事は、開発許可をしてはならない。
引用:e-gov
「次の各号」は14項目もあるのでここでは省略しますが、資材置き場に建てる建物に関するものは無さそうです。
また、コンテナなどの基礎の無い物であれば建築物ではないから大丈夫と思われがちですが、基本的にはそれらも建築することができない点にご注意ください。
横浜市の建築局は以下のように述べています。
市街化調整区域での建築にご注意を!
このような市街化調整区域の土地を購入する際、「簡易なものであれば建築しても大丈夫」と思い込み、物置やコンテナ等を設置して違反建築物となってしまうケースが多く見受けられます。
契約者間でのトラブルにも繋がりますので、市街化調整区域内の土地の売買の際は簡易なものであっても建築することができないことにお気をつけください。
建築物とは
「屋根」と「壁もしくは柱」があるもの。基礎の有無や材質によらず、以下のような簡易なものも建築物です。
例
プレハブ・ユニットハウス
コンテナ(倉庫・店舗の用途)
単管パイプ組による屋根掛け
スチール物置
引用:横浜市
基本的に市街化調整区域は乱開発を抑えるための区域なので、建物は建てられないと考えた方が良さそうです。
まとめ
足場の資材置き場の選び方、注意点などを解説いたしました。
- 資材置き場のメリットは、フットワークが軽くなり迅速に対応できる、工事の受注から完了まで自社のみで管理できる、工事費用を抑えられるの3つです。
- 資材置き場を選ぶ際、市街化調整区域を選ぶことがポイントです。トラックが出入りするため面している道路が広い、高速道路の出入口が近い、または主要道路が近い、騒音のトラブルにならないように住宅から離れている、資材置き場自体が平坦である、土地の値段が安いなどの条件を満たしている場合が多いからです。
- 田んぼや畑などの農地を資材置き場にする場合、「農地転用」が必要になります。農地転用は、市街化区域内であれば農業委員会に届け出を出すだけで転用することが可能ですが、その土地が市街化調整区域にある場合は都道府県知事の許可が必要となります。
- 資材置き場を選ぶ際、インフラが整っているかどうかの確認をするようにしてください。
- 市街調整区域には基本的に建物を建てることができませんので注意してください。
資材置き場の選び方や注意点を理解し、足場工事に役立ててください。