さまざまな種類がある足場材ですが、材質によって特徴や用途に違いがあります。
本記事では、足場材の特徴や用途などをそれぞれ解説いたします。
足場材の材質にはどんなものがある?
足場材には、大きく分けて金属製と、木製の2つの種類があります。
さらに、金属製の足場材はアルミ製、スチール製の2つの種類があり、木製の足場材は丸太足場、杉足場板、合板足場板の3つの種類があります。
近年では、アルミ製の足場材が主流になっており、多くの足場業者が使用しています。
それら全ての足場材には基準があり、基準を上回ったものを使用しなければなりません。
足場材の材質の基準
足場材の基準は、労働安全衛生規則により定められています。
労働安全衛生規則
材料等)
第五百五十九条 事業者は、足場の材料については、著しい損傷、変形又は腐食のあるものを使用してはならない。
2 事業者は、足場に使用する木材については、強度上の著しい欠点となる割れ、虫食い、節、繊維の傾斜等がなく、かつ、木皮を取り除いたものでなければ、使用してはならない。
(鋼管足場に使用する鋼管等)
第五百六十条 事業者は、鋼管足場に使用する鋼管のうち、令別表第八第一号から第三号までに掲げる部材に係るもの以外のものについては、日本産業規格A八九五一(鋼管足場)に定める単管足場用鋼管の規格(以下「単管足場用鋼管規格」という。)又は次に定めるところに適合するものでなければ、使用してはならない。
一 材質は、引張強さの値が三百七十ニュートン毎平方ミリメートル以上であり、かつ、伸びが、次の表の上欄に掲げる引張強さの値に応じ、それぞれ同表の下欄に掲げる値となるものであること。
引張強さ(単位 ニュートン毎平方ミリメートル) 伸び(単位 パーセント) 三百七十以上三百九十未満 二十五以上 三百九十以上五百未満 二十以上 五百以上 十以上 引用:中央労働災害防止協会
このように、足場材の材質について細かく定められています。
「著しい損傷、変形又は腐食」はもちろんのこと、「引張強さの値が三百七十ニュートン毎平方ミリメートル以上」と、強度の基準まで記されています。
引張強さとは足場材が壊れるまで引っ張った時の強さのことで、その時の伸び率が上記の基準を上回ってなければなりません。
これらの基準をクリアした足場材が市場に出回っています。
では、それぞれの材質の特徴を解説いたします。
金属製の足場
金属製の足場は、アルミ製足場とスチール製足場の2種類あります。
アルミ製の足場材
アルミ製の足場材は、軽量かつ丈夫で耐食性に優れているという特徴があります。
同じ金属製のスチール製足場材と比べても、鉄の比重は7.8に対してアルミの比重は2.7です。
もちろん、アルミ製足場材だからといって全てが純粋なアルミのみで作られているわけではありませんが、スチール製よりもアルミ製の方が軽いのは確かです。
足場材が軽ければ、作業員の負担を減らせるだけでなく運送のコストも減らすことができます。
また、アルミは鉄と違ってとても錆びにくい性質を持っています。雨や散水などの水と接触する機会の多い足場ですが、錆びずらいというのは安全性を守る上で重要です。
スチール製の足場材
スチール製の足場材は、頑丈であることと経済的であるという特徴があります。
1スパン1,800mmだった場合の耐荷重は150kgほどあり、他の足場材と比べても頑丈です。
メッキ加工されている足場材がほとんどなので、純粋な鉄よりも錆に強いです。
また、アルミ製の足場に比べて安く購入できる場合がほとんどです。
アルミの足場板は1枚あたり6,000円~8,000円ですが、スチールの足場板は1枚あたり4,000円~6,000円ほどで購入することができます。
木製の足場材
木製の足場材は、丸太足場、杉足場板、合板足場板の3種類があります。
丸太足場
丸太足場は、その場で加工できるので、複雑な建物でも対応できるという特徴があります。
また、他の足場材に比べて弾力性があるので、建物に優しく、傷がつきにくいです。
それらの特徴から、平等院鳳凰堂などの重要文化財をメンテナンスする場合に使われています。
昔は丸太を緊結するのに縄で結んでいましたが、現在は安全面の観点から番線を使用して緊結しています。
杉足場板
杉足場板は主に、高速道路、橋梁、各種プラント工事などに使用されます。
木材なので、温度の変化、腐食などにより時間と共に劣化してしまいます。
そのため、3年~5年ほど使用し、新しい杉足場板と入れ替えます。
古くなった使用済みの杉足場板は、リサイクルウッドとして家具やDIYの材料に使われています。
合板足場板
合板足場板は、複数枚の薄板を木目に直角になるように接着剤で張り合わせたものになります。
木目に直角になるように合わせることで、木材特有の時間と共に伸縮する性質を抑えることができます。
また、木目が1方向ではないため、亀裂が生じにくく頑丈です。
空港や駅、お寺などさまざまな場所で使用されています。
足場材の歴史
足場の歴史は紀元前から使われてきたと言われており、エジプトのピラミッドや、中国の万里の長城でも使用されました。
日本では、城を建てる際に戦国時代から木製足場が使用されたことが分かっています。
木材は、簡単に手に入り、加工しやすく丈夫であることから、木製足場は主流の足場として使用され続けました。
そして、明治時代中ごろ、欧米でスチール足場が誕生しました。
木材は、材質が不安定で、安全基準を考えた時の強度計算が難しいという欠点がありました。
そのため、欧米では次第に木製足場に代わってスチール足場が一般的に使われるようになったのです。
しかし、日本でスチール足場が主流になるまでには、とても長い時間がかかりました。
低層の住宅工事がメインだったこの頃の日本にとって、木材以上の強度を必要としなかったのです。
強度よりも、木製足場の特徴である加工のしやすさという柔軟性に需要があった為、スチール製足場は参入の余地がありませんでした。
欧米でスチール足場が誕生して70年程経った昭和の中ごろ、日本の安全意識が高まり、足場の事故を問題視した政府は労働安全衛生法を施行します。
その内容は、床材の隙間3cm以下、開口部の手すり設置、作業床の幅40cm以上など、今まで主流だった木製足場でこの基準を満たすのは容易ではありませんでした。
そこで、全国的に金属製足場が必要となり、日本でも主流の足場となりました。
まとめ
足場の材質の違いについて解説いたしました。
- 足場材には、大きく分けて金属製と木製の2つの種類があり、金属製の足場材はアルミ製、スチール製の2つの種類、木製の足場材は丸太足場、杉足場板、合板足場板の3つの種類があります。
- 足場材の基準は、著しい損傷、変形又は腐食されたものは使用できず、引張強さの値が三百七十ニュートン毎平方ミリメートル以上など、労働安全衛生規則により定められています。
- アルミ製の足場材は、軽量かつ丈夫で耐食性に優れているという特徴があります。
- スチール製の足場材は、頑丈であることと経済的であるという特徴があります。
- 丸太足場は、その場で加工できるので、複雑な建物でも対応できるという特徴があります。
- 杉足場板は主に、高速道路、橋梁、各種プラント工事などに使用され、その後はリサイクルウッドとして使用されます。
- 合板足場板は、木目に直角になるように合わせることで、木材特有の時間と共に伸縮する性質を抑えることができます。
- 足場の歴史は古いですが、日本で金属製足場が主流になったのは昭和の中ごろ以降です。
足場材の材質の違いを理解し、足場工事に役立ててください。