足場工事の資材・用語解説

足場で使用する養生カバーの種類とは?また、養生カバーの役割とは?

建物の建築・建設時、塗装工事、解体工事をする際に使用されることの多い「足場の養生カバー」ですが、どんな役割をもち、どんな種類があるかご存じですか?この記事では、足場の養生カバーの役割や種類、大きさについて詳しく解説していきます。今まで何となく養生カバーを選んでいたという方も、これを読めば、現場に合ったカバーが選べるようになるでしょう。

足場の養生カバーとは?

足場の養生カバーとは、足場全体を覆うカバーのことです。養生カバーをすることで、作業中の物の落下を防いだり、塗料などの飛散を防いだりするだけでなく、「きちんと安全対策を講じている」という近隣へのアピールにもつながります

足場の養生カバーは足場に直接つけるのが一般的ですが、現場周辺の車やバイクなど、守りたい対象物に被せて、使用する場合もあります。

足場の養生カバーの役割

足場の養生カバーの役割は以下の7つです。

  • 工具や資材の落下防止
  • 粉塵・塗料などの飛散防止
  • 作業者の墜落防止
  • 近隣への防音対策
  • 塗装を美しく仕上げる
  • 周囲へ安全性をアピールする
  • 建築物や車等へのキズ・汚れ・へこみ防止 ※養生カバーを被せて使用する場合

足場の養生カバーは、さまざまな役割を果たす大切な資材であることを頭に入れておきましょう。

足場の養生カバーの種類

足場の養生カバーにはどのような種類があるのでしょうか?主な種類は以下の通りです。

  • 防音シート
  • 採光防音シート
  • 防炎シート
  • 養生メッシュシート
  • 透過メッシュシート
  • 景観対策養生シート(ビルラッピング)
  • 単管用養生カバー

これらの養生カバーは、作業内容や現場の立地条件、気候状況によって使い分け方が異なります。以下でひとつずつ解説していきますので、用途に合わせて適切なカバーが選べるようにしましょう。

防音シート

「防音シート」は、外に音を漏れにくくする養生カバーです。大きな音の出やすい解体作業時に、頻繁に用いられます。

色は銀色か黒色のものが多く、厚さは0.5~1mm程度。シートとシートのすき間がないように、完全に現場を覆うことで、しっかりとした防音効果を発揮します。防音効果を高めたい場合は、二重にして使用するとさらに効果的です。このシートには穴が空いていないので、解体時に生じる粉じんを周囲に飛散させない効果もあります。

しかし逆を言えば、通気性がないため、強風時に風にあおられて足場が倒壊する危険性もあります。必ず使いどきを見極めてから使用するようにしましょう。

採光防音シート

防音シートの機能に加え、自然光を取り入れられるように加工されたのが「採光防音シート」です。前述のとおり防音シートは、すき間なく現場を覆うことで騒音を防げますが、そのせいで光が入りづらくなり、作業する手元が見えにくくなってしまいます。

そこで採光防音シートを使うことで、自然光が入り、作業性が上がります。

防炎シート

「防炎シート」は、燃えにくい素材で作られた養生カバーです。一般住宅で使われることはあまりなく、大きな鉄筋コンクリートの建物の建設・解体時に使用されます。

これは、ガス溶断の機械を使ったり、電気による溶断を行ったりして、火花の飛び散る作業が多いためです。仮に火花がシートに燃え移ったとしても、防炎シートであれば燃え広がる心配がありません。

ちなみに、高さ31m以上の建築物においては、防炎シートの使用が消防法で義務付けられています。(※)このような現場で作業する場合は、消防法令の防炎性能基準を満たしている証である「防炎ラベル」がついた防炎シートを必ず使用しましょう。

参考:JFRA日本防炎協会消防庁

養生メッシュシート

「養生メッシュシート」は、ビニールのような素材ではなく、メッシュ生地(細かい穴が空いた生地)で作られた養生カバーです。防音シートや防炎シートは穴が空いていないため風にあおられやすく、最悪の場合、足場が倒壊する危険性もありますが、養生メッシュシートならそのリスクを抑えることができます。

ひいては、丘の上にある現場や、海の近くにある現場では、このタイプのシートを使うことが多いです。また、台風などの季節は、急な気候の変化に備えてメッシュシートを張っておく場合もあります。

ただし、塗装工事の場合は、細かな穴のすき間から塗料が抜け、周囲に飛散してしまう可能性もありますので注意しましょう。

養生メッシュシートに関しては、「社団法人仮設工業会」により明確な認定基準が設けられています。購入する際は、仮設工業会から認定されたシートを選ぶようにしましょう。

【社団法人仮設工業会に認定されたメッシュシートを販売する企業一覧】

・IMSテクノ株式会社
・キョーワ株式会社
・大嘉産業株式会社
・株式会社チサト
・株式会社イノベックス
・東山産業株式会社
・平岡織染株式会社
・明治商工株式会社
・モリリン株式会社
・市川漁網製造株式会社

(引用:社団法人仮設工業会

さらに、養生メッシュシートには「1類」「2類」という区別があることも覚えておきましょう。この数字の違いは「強度」の違いを表しており、1類の方が強度の強い養生メッシュであることを指しています。

1類は重量4.8kgの足場用銅管を4mの高さから自由落下させても貫通させません。

一方2類は、重量2.7kgの足場用銅管を3mの高さから自由落下させても貫通させません。

一般住宅か、それ以外かによって、1類を使うか2類を使うかが異なるので、適材適所で用いるようにしましょう。

透過メッシュシート

「透過メッシュシート」は、養生メッシュシートに比べてさらに透過性の高い養生カバーです。人の顔が分かる程度に透けるので視認性が高まり、作業性も防犯性も向上します。また、建物の内側から外を見たときの圧迫感も軽減します。

景観対策養生シート(ビルラッピング)

「景観対策養生シート」は、改修工事を行う商業施設や公共施設向けの養生カバーです。既存建築物の外観をシートに印刷し、工事中でも建物があるように見せることで、景観全体のイメージを保ちます。特に観光客が多い場所で利用されることが多く、すべて受注生産品となります。

単管用養生カバー

「単管用養生カバー」は、単管足場用の養生カバーです。黄色と黒のトラ模様など、目立つ色のものを使用することで、作業者・歩行者が単管にぶつからないよう注意喚起できます。

もしぶつかってもクッションで衝撃を和らげられて安心です。筒状であらかじめ背が割れているタイプが多く出回っているので、単管に巻きつけるだけで取り付けられます。

足場の養生カバーの大きさ

養生カバーの大きさ単位は1間(約1.82m)です。「1×1、1×2、1×3」と表示されている場合、「1間1間、1間2間、1間3間」の大きさを表しています。ただし、表記上は1間としていても、便宜上1間をメートル法に置き換え、1.8mにしいているメーカーがほとんどです。そのため、養生シートの大きさに、「1.8×1.8、1.8×3.6、1.8×5.4」という表記もされています。

まとめ

今回は、足場で使用する養生カバーの種類や役割について解説しました。足場の養生カバーとは、足場全体を覆うカバーのことで以下のような役割があります。

  • 工具や資材の落下防止
  • 粉塵・塗料などの飛散防止
  • 作業者の墜落防止
  • 近隣への防音対策
  • 塗装を美しく仕上げる
  • 周囲へ安全性をアピールする
  • 建築物や車等へのキズ・汚れ・へこみ防止 ※養生カバーを被せて使用する場合

また、足場の養生カバーには以下のような種類があります。

  • 防音シート
  • 採光防音シート
  • 防炎シート
  • 養生メッシュシート
  • 透過メッシュシート
  • 景観対策養生シート(ビルラッピング)
  • 単管用養生カバー

足場の養生カバーは、作業内容や現場の立地条件、気象状況によって使い分ける必要があります。正しい選択をしなければ、近隣に迷惑がかかったり、作業者の安全面が疎かになったりしますので、必ず適切なものを選択しましょう。

また、足場の養生カバーの付け方ひとつで、企業の質も判断されます。すき間がないように設置する、風にたなびかないように設置する、ほつれの無いものを使うなど、基本的なことを怠らず、誰が見ても安全に作業していると思わせる状態を保つことを、常に心掛けましょう。