自分の家であっても、普段の生活で屋根を見る機会はほとんどありません。
しかし、メンテナンスを怠り、放置し過ぎると家の寿命を縮めてしまったり、雨漏りなどの原因になります。
あるタイミングで屋根工事を行わないといけないのですが、工事費用や工事内容がわからずなかなか手を出せないという人も多いと思います。
本記事では、屋根工事の種類ごとに費用相場、内容を徹底解説いたします。
屋根工事とは?
屋根工事とは、瓦・スレート・金属薄板などによる屋根をふく工事のことをいいます。
国土交通省では、屋根工事を以下のように定義しています。
建設工事の区分の考え方
(建設業許可事務ガイドライン)
「瓦」、「スレート」及び「金属薄板」については、屋根をふく材料の別を示したものにすぎず、また、これら以外の材料による屋根ふき工事も多いことから、これらを包括して「屋根ふき工事」とする。したがって板金屋根工事も『板金工事』ではなく『屋根工事』に該当する。
引用:国土交通省
29種類ある建設業のうちの1つで、「専門工事」に分類されます。
屋根工事を行うと、以下の効果を得ることができます。
- 雨漏り防止
- 家の寿命を伸ばす
- 家の外観を変更できる
中でも、メインは雨漏りを防止できるという効果です。
屋根は放置しておくと、雨風により劣化し、やがてひび割れが発生し、雨漏りすることがあります。
1度雨漏りしてしまうと、雨漏り箇所から腐食が始まり、最終的に住むことができなくなる場合があります。
そのような事態を防ぐために屋根工事で雨漏りを防止する必要があります。
また、家の寿命は新築工事やリフォーム工事時の仕上がりに大きく影響されます。
なので、屋根工事を行う前に比べて屋根工事を行った後は、家が一新されて長持ちするということです。
屋根工事のタイミング
次は、屋根工事のタイミングはいつが良いのかということについて解説します。
雨漏りを確認したら早急に屋根工事を依頼するのはもちろんのことですが、そうなる前に以下の3点を目安に屋根工事を検討してください。
- カビのような臭いがする
- 天井にシミができている
- 築10年以上経っている
カビやシミが発生しているということは、屋根が劣化し、水が侵入してきている可能性があります。
そのような症状が確認できなくても、築10年も経つと紫外線や雨で劣化し、屋根工事のタイミングと言えるでしょう。
また、天井にシミがある場合は、雨漏り以外にもネズミなどの小動物の影響も考えられます。
この場合は屋根工事のみでは解決できないため、専門の業者に駆除を依頼する必要があります。
屋根工事の季節は、雪が降るような季節を避ければいつでも問題ありません。
梅雨の時期は工事が延期されてしまう可能性がありますが、雨が降っていれば散水調査で水道を使わなくても良いというメリットもあります。
屋根葺き替え工事
屋根葺き替え工事とは、屋根材、防水シート、野地板を撤去し、新しいものに張り替える工事のことです。
築年数が30年以上経っていたり、屋根の劣化が激しい場合に屋根葺き替え工事を行います。
長年使用した下地まで補修できるので、工事後の不具合が起きにくくなるというメリットがあります。
近年、地震などを懸念して軽量の屋根に替える家が増えています。軽量な屋根に変更することで、耐震性の向上が期待できます。
デメリットとして、既存の屋根を廃棄物として撤去しなければならないため、工事費用が高額になります。
特に、アスベストをふくむスレートなどの屋根材は、廃棄物処理代がより高額になります。
工程は以下の通りです。
- 棟板金を外す
- 屋根材を外す
- 防水シートを剥がす
- 野地板を剥がす
- 新たな野地板を取り付ける
- 新たな防水シートを取り付ける
- 新たな屋根材を取り付ける
- 新たな棟板金を取り付ける
工事の日数は、6日~8日ほどです。
工事の費用は約80万円~300万円になります。
屋根カバー工法
屋根カバー工法とは、元々の屋根の上から新たな屋根を重ねるように取り付ける工事です。
屋根葺き替え工事同様、屋根の劣化が激しくなった時や、築30年を目安に工事を行います。
屋根葺き替え工事と比べて、元々の屋根を撤去する必要が無いので、工事費用を抑えることが出来ます。
2004年に、重量に対して1%を超える石綿含有建材、摩擦材、接着剤等、10品目が禁止されました。
そのため、2004年以前にスレート屋根で家を建てた方は廃棄物処理代が高額になる可能性が高いです。
その場合は、元々の屋根に重ねる屋根カバー工法がおすすめです。
工程は以下の通りです。
- 屋根洗浄
- 屋根材を重ねるための屋根下地合板を取り付ける
- 防水シートを取り付ける
- 新たな屋根を取り付ける
工事の日数は、6~8日ほどです。
工事の費用は、約90万円~150万円になります。
屋根塗装工事
屋根塗装工事とは、塗装工事専用の塗料で屋根を塗り替える工事です。
塗料には、様々な種類がありますが、大きく分けて「耐候性に特化したもの」、「断熱性に特化したもの」、「遮熱性に特化したもの」の3つです。
耐候性塗料とは、気候の変化に対する耐性のある塗料です。太陽光、紫外線、寒暖差などで塗料の状態が変化しづらく、劣化しづらいという特徴があります。
長持ちするため、塗り替えの回数を減らし、総合的にコストを抑えることができます。
断熱性塗料とは、熱を伝わりにくくする性質を持つ塗料のことです。熱を伝わりにくくすることで、真夏の温度から室内温度の上昇を防ぐだけでなく、真冬でも室内の熱を外に逃がさないという効果があります。
遮熱性とは、太陽光を反射することによって表面の温度上昇を抑制させる塗料のことです。
真夏の温度上昇防止に特化した塗料です。
家の環境や、用途に合わせて適切な塗料を選択します。
屋根材の防水性が薄れた時や、塗料が剥がれてしまった場合に屋根塗装工事が必要になります。
工程は以下の通りです。
- 足場の組み立て
- 屋根洗浄
- 下地処理
- 養生
- 下塗り
- 中塗り
- 上塗り
工事の日数は、10日~15日程かかります。
工事費用は、約50万円~100万円になります。
漆喰補修工事
漆喰補修工事とは、瓦の下に敷かれている漆喰(土のような接着剤)を入れ替える、または補充する工事のことです。
瓦屋根の家を建てて15年以上経っていたり、台風が直撃する地域に建っている場合は瓦のズレや、漆喰の剥離が生じますので、漆喰補修工事が必要になります。
瓦の耐用年数は30年~50年程で、通常の屋根よりも長持ちするのですが、漆喰自体はそこまでの耐用年数が無いため、15年ほどでメンテナンスが必要になります。
工程は以下の通りです。
- 漆喰のメンテナンス
- 劣化した漆喰の撤去
- 漆喰の取り替え、又は補充
工事の日数は、3日~5日程かかります。
工事費用は、約30万円~90万円になります。
棟板金交換工事
棟板金工管工事とは、棟板金を外し、新たな棟板金を取り付ける工事のことです。
棟(むね)とは戸建て住宅の最上部に取り付ける屋根部材です。
スレート瓦や金属屋根で用いる棟は金属製であるため棟板金と呼ばれています。
棟板金の下地も腐食していると、下地も取り替えます。
経年劣化により固定している釘が緩み、強風により棟板金が浮き上がってしまう場合があります。
このまま放置してしまうと、雨漏りの原因になるので、棟板金交換工事が必要になります。
最近では、棟板金の錆を防ぐため、トタンではなくガルバリウム鋼板や、エスジーエル鋼板に取り替える場合が多いです。
ガルバリウム鋼板とは、55%のアルミと亜鉛合金のメッキ鋼板のことで、耐久性に優れています。
しかし、海沿いや工場近くに位置していると、錆が発生する可能性があり、割れる性質がない代わりにへこみやすいという性質を持っています。
エスジーエル鋼板とは、ガルバリウム鋼板にマグネシウムを加えたものです。
ガルバリウム鋼板よりも3倍程度の耐食性を持っていて、価格もガルバリウム鋼板とほとんど変わらないことから、エスジーエル鋼板を使用する人が増えています。
また、棟板金を固定するために打った釘の穴から雨水が侵入し、雨漏りになってしまう場合があります。
そのようなことが予想される場合、ビス止めに変更するなどの対策が必要です。
棟板金交換工事は、屋根塗装工事と一緒にやる方も多くいます。
工程は以下の通りです。
- 元々の棟板金を取り外します
- 下地の点検、交換
- 新たな棟板金を取り付けます
工事の日数は、2日~5日程度かかります。
工事の費用は約20万円~90万円になります。
雨樋交換工事
雨樋交換工事とは、雨樋の破損や劣化箇所を修復、交換する工事のことです。
雨樋とは、屋根面を流れる雨水を溜めて下水などに誘導する設備のことをいいます。
雨樋が老朽化などにより破損していると、雨水を誘導できず、外壁など他の部分も劣化させてしまいます。
また、近所に林や木が生えていたりすると、落ち葉などのゴミが雨樋を詰まらせ、劣化させる原因になります。
雨樋のゴミ掃除など、定期的なメンテナンスを行うことで、家全体の寿命を伸ばすことに繋がります。
工程は以下の通りです。
- 雨樋の劣化箇所、破損部分を確認
- 雨樋の修復、取り換え
工事の日数は、1日~2日程かかります。
工事費用は、約1万円~10万円になります。
比較表
次は、これまで紹介した屋根工事の比較表になります。
工事名 | 内容 | 工期 | 工事費用 |
屋根葺き替え工事 | 屋根材、防水シート、野地板を撤去し、新しいものに張り替える | 6日~8日 | 80万円~
300万円 |
屋根カバー工法 | 元々の屋根の上から新たな屋根を重ねるように取り付ける | 6日~8日 | 90万円~
150万円 |
屋根塗装工事 | 塗装工事専用の塗料で屋根を塗り替える | 10日~15日 | 50万円~
100万円 |
漆喰補修工事 | 瓦の下に敷かれている漆喰を入れ替える | 3日~5日 | 30万円~
90万円 |
棟板金交換工事 | 棟板金を外し、新たな棟板金を取り付ける | 2日~5日 | 20万円~
90万円 |
雨樋交換工事 | 雨樋の破損や劣化箇所を修復、交換 | 1日~2日 | 1万円~
10万円 |
まとめ
屋根工事の種類、内容、費用相場について解説いたしました。
- 屋根工事とは、瓦・スレート・金属薄板などによる屋根をふく工事のことをいいます。
- 屋根工事を行うと、雨漏り防止、家の寿命を伸ばす、家の外観を変更できるという効果を得られます。
- 屋根工事を行わず、放置しておくと、雨風により劣化し、やがてひび割れが発生し、雨漏りすることがあります。
- カビのような臭いがする、天井にシミができている、築10年以上経っている時は、屋根工事を行うタイミングです。
- 屋根工事の内容、工期、費用を比較表にまとめました。
屋根工事の際は、内容や相場を理解して、生活に役立ててください。