足場工事には、さまざまなトラブルが隠れています。
事前に出来る備えをしなかったり、トラブルの防止策を知らないと、思わぬ所からトラブルに繋がってしまうケースがあります。
本記事では、足場工事に関するトラブルの例と、その防止策を併せて解説します。
足場材の搬入、組立時の騒音
足場材を搬入し、荷下ろしする際や、足場の組み立て時に発生する音は、近隣住民にとって結構な騒音になります。
組み立て時でも、インパクトドライバーで固定する時や、ハンマーを使って接合する時など、足場材は鉄やアルミなどの金属製で作られているため、足場同士がぶつかり合った時などに大きな音が発生します。
例えば、くさび式足場の組み立て時にハンマーを使用しますが、この時のハンマーと足場材がぶつかり合う音は80db(デシベル)を超えます。
db数のイメージは次の通りです。
日常会話 → 50db
目覚し時計 → 60db
地下鉄の車内 → 80db
隣接する家の住民にとっては、地下鉄に乗っている時同じくらいの音が聞こえてくると思うと、この騒音は無視できません。
足場工事は、騒音規制法の特定建設作業外ですので、市区町村への届け出は必要はありませんが、事前に案内などを作成し、工事日を近隣住民にお知らせして理解を頂くなどの事前準備をすることで、トラブルを防止することが出来ます。
ほこり、塗料の飛散
外壁塗装や、屋根の張替工事などの足場工事では、ほこりや塗料の飛散に注意しなければなりません。
高圧洗浄機を使って洗浄する際に、塗料が飛散したり、屋根の張替え時にほこりが舞うなどの問題が発生します。
その際は、メッシュシートを設置したり、養生を行う必要があります。場合によっては、自動車や構造物にもカバーを取り付けるなどの対応も必要です。
メッシュシートを使用しても、工事内容によっては塗料や汚水が飛散する恐れのある場合があります。その際は、強風に注意し、ブルーシートや防炎シートなどの隙間の無い養生シートを使用する必要があります。
搬入車による進路妨害
足場材を現地に運ぶ際、搬入車を使用します。搬入車から足場材を荷下ろしする時に、長時間道路に駐車しなければならない場合があります。
搬入車が邪魔で他の車が道を通れなかったり、駐車場に駐車出来ないという可能性があります。
道や敷地のスペースの関係で、どうしても交通の妨げになってしまう場合は、事前に道路使用許可を警察署に申請し、許可を貰う必要があります。
道路の本来の用途に即さない道路の特別の使用行為で、交通の妨害となり、又は交通に危険を生じさせるおそれのあるものは、一般的に禁止されていますが、このうち、それ自体は社会的な価値を有することから、一定の要件を備えていれば、警察署長の許可によって、その禁止が解除される行為を、道路使用許可が必要な行為として道路交通法第77条第1項に定めています。
引用:警察庁
敷地内へ無断侵入
都心などの住宅が密集した場所での足場工事だと、足場のスペースが取れないことがあります。
スペースが十分に取れず、足場が隣人の敷地内に侵入してしまった場合、トラブルになるケースが多いです。
他人の敷地を無断で使用することは出来ないように思われますが、実は外壁塗装などの修繕が目的であれば、民法上は許されています。
民法第209条
土地の所有者は、次に掲げる目的のため必要な範囲内で、隣地を使用することができる。ただし、住家については、その居住者の承諾がなければ、立ち入ることはできない。
- 境界又はその付近における障壁、建物その他の工作物の築造、収去又は修繕
引用:WIKIBOOKS
しかし、他人の工事のために自分の敷地を使用されて気持ちが良いと思う人はいません。
作業者にとってはそれっきりの関係でも、依頼者にとっては工事後も関係は続きます。なので、事前に隣人の家に必ず挨拶に伺いましょう。
その際は、工事の期間、お借りする範囲、作業内容など細かく説明し、理解を得ることでトラブルを避けることが出来ます。
たとえ、依頼者が許可を出していたとしても直接挨拶に伺っておいた方が安心です。
建物、植木の破損
足場の組み立て時や、足場の解体時などの作業時に誤って建物の一部を傷つけてしまったり、植木の枝を折ってしまった場合、作業時に破損させてしまった業者が責任を持ちます。
しかし、業者も依頼者も心当たりがない傷は、やったやってないという話になり、トラブルになり兼ねません。
そうならない為に、事前に写真を撮って残しておくと安心です。また、心配な作業の部分だけでも依頼者に立ち会って貰うという方法もあります。
そして、もし破損させてしまった場合は、直ちに依頼者へ連絡して謝罪して下さい。その後は保険会社に連絡して状況を説明します。
保険で対応出来るかどうかは、その保険の内容によります。近隣の住宅の破損も含むのか、リフォーム箇所以外も含むのか、事前に確認しておきましょう。
強風による足場倒壊
強風により、足場が倒壊してしまう事故が多発しています。特に、春一番で吹く強風には注意して下さい。
風は、いつ来るか読めるものでは無いため、完全に防ぐことは難しいですが、出来る備えはたくさんあります。
足場を組み立てただけでは風の影響を受けにくいですが、養生シートを張ると風に当たる面積が増え、一気に風の影響を受けやすくなります。
養生シートにはさまざまな種類があり、防音シートは騒音を抑えることが出来ますが、風の影響を受けやすいです。
メッシュシートは騒音を抑えることは出来ませんが、風通しが良く、風の影響を受けにくいです。
工事内容や、天気の状態を加味して適切なシートを選んで下さい。
また、台風などの、強風が来るとわかっている場合は、シートを畳むなどの備えが重要です。
労働安全衛生総合研究所は、足場倒壊の防止対策について次のように述べています。
災害調査報告書
建設作業現場における足場倒壊災害
4.再発防止対策
強風が予想される場合は、メッシュシートや防炎メッシュなど風荷重が大きくなる要因となる材料は撤去するか巻き上げるなどの措置をとり、壁つなぎは十分は補強を行う必要がある。特に上端部など建築物よりも突出している足場に対しては、控え材などで補強し、壁つなぎ1本の負担面積を減らすようにするべきである。
引用:労働安全衛生総合研究所
分かる範囲で天候情報をキャッチし、天候に合わせた対策をすることでトラブルを防止することが出来ます。
まとめ
足場工事に関するトラブルの例と、その防止策を解説いたしました。
- 足場材の搬入、組み立て時の騒音に注意しましょう。事前に近隣住民に案内をして理解を得ることでトラブルを防止することが出来ます。
- ほこり、塗料の飛散に注意しましょう。メッシュシートなどの養生を行い、場合によっては自動車にもシートをかけることでトラブルを防止することが出来ます。
- 搬入車が他の自動車の進路を妨害しないように注意しましょう。スペースの関係でどうしても道を使いたい場合、事前に道路使用許可を取りましょう。
- 他の敷地内へ無断侵入しないように注意しましょう。事前に断りを入れることでトラブルを回避出来ます。
- 建物や植木を破損しないように注意しましょう。事前に写真を残しておいたり、作業内容に合った保険に入ることでトラブルを防止することが出来ます。
- 強風による足場倒壊に注意しましょう。出来る限りの天候情報をキャッチし、シートを畳むなどの対策をすることで倒壊のリスクを下げることが出来ます。
足場工事のトラブルと防止策を理解し、足場工事に役立てて下さい。