足場工事における最大積載荷重と、許容積載荷重の違いについて解説いたします。
足場の種類ごとにも違いがありますので、併せてご紹介いたします。
最大積載荷重と許容積載荷重の違いは?
足場の最大積載荷重とは、1スパンあたりに載せられる最大の重量のことです。
足場の許容積載荷重とは、作業床1枚あたりに載せられる最大の重量のことです。
許容積載荷重を越えなければ1スパンにいくらでも載せていいというわけでもありませんし、最大積載荷重を越えなければ1枚の作業床にいくらでも載せていいというわけでもありません。
それぞれの積載荷重を理解した上で足場工事にとりかかる必要があります。
また、最大積載荷重は、作業員に周知させるために表示しなければなりません。これは、労働安全衛生法で定められています。
(最大積載荷重)
第五百六十二条
事業者は、足場の構造及び材料に応じて、作業床の最大積載荷重を定め、かつ、これを超えて積載してはならない。
2 前項の作業床の最大積載荷重は、つり足場(ゴンドラのつり足場を除く。以下この節において同じ。)にあつては、つりワイヤロープ及びつり鋼線の安全係数が十以上、つり鎖及びつりフツクの安全係数が五以上並びにつり鋼帯並びにつり足場の下部及び上部の支点の安全係数が鋼材にあつては二・五以上、木材にあつては五以上となるように、定めなければならない。
3 事業者は、第一項の最大積載荷重を労働者に周知させなければならない。
引用:中央労働災害防止協会
最大積載荷重はどのようにして決まるかというと、原則として作業床の許容積載荷重によって決まります。
作業床1枚あたりの幅が広ければ、下の表のように許容積載荷重も大きくなります。
作業床の幅 | 作業床の長さ | 許容荷重 |
240mm | 1,800mm | 120kg |
300mm | 1,800mm | 150kg |
500mm | 1,800mm | 250kg |
また、作業床の枚数を増やすことで、1スパンあたりの最大積載荷重を大きくすることも出来ます。
例えば、幅500mmの作業床を2枚敷くことで500kgの荷重に耐えることが出来、幅500mmの作業床と、幅300mmの作業床を敷くことで400kgの荷重に耐えることが出来ます。
これらの数字は、仮設工業会で各作業床の強度を設定しています。積載荷重とはいえ、1kgオーバーすると崩れてしまうというものではなく、強度を2~2.5程の安全率で割った数字になります。
なので、実際には数字以上の強度があります。
しかし、作業床は全て同じ劣化具合というわけではなく、部材により状態のバラつきがあります。
そのような面を考慮して余裕を持った安全率に設定しています。
また、つり足場は他の足場よりも安全性が求められるため、安全率を高めに設定しています。
足場の種類ごとの最大積載荷重
最大積載荷重は、足場の種類によってそれぞれ設定されています。
足場の種類 | 1スパンあたりの
最大積載荷重 |
備考 | |
標準わく組足場 | 建わく幅1,200mm | 500kg以下 | 床付き布わくによって決まる場合の同時積載総数。 |
建わく幅900mm | 400kg以下 | ||
簡易わく組み足場 | 250kg以下 | ||
低層工事用簡易わく組足場 | 250kg以下 | 1スパンあたりの最大積載荷重は250kgで、同スパン内の同時積載総数は2層以下とする。 | |
単管足場 | 400kg以下 | 1スパンあたりの最大積載荷重は400kg以下で同スパン内の同時積載層数は2層以下とし、これを連続スパンにわたって積載しない。 | |
ブラケット一側足場 | 150kg以下 | 足場の最大積載荷重は、1スパンあたり150kg以下で建地1本あたり100kgとする。 | |
吊りわく足場 | 200kg以下 | 両側合わせて400kg以下とする。鉄骨梁取付け式吊り足場および鉄骨柱取付け式足場も片側200kg以下とする。 | |
吊り棚足場 | ループ吊り | 430kg/本 | 吊りチェーン1本あたりの許容耐力を2.36kNとし、ループ吊りの時は4.21kN以下とする。 |
1本吊り | 240kg/本 | ||
くさび緊結式足場 | 前後踏み間隔900mm以上 | 400kg以下 | この積載荷重は、同一スパン上2層までの荷重とし、連続スパンにわたって積載しないこと。 |
前後踏み間隔400mm以上900mm以下 | 200kg以下 | ||
低層住宅工事用足場 | ブラケット一側足場1本建地 | 200kg以下 | 足場1構面につき400kg以下とする。 |
ブラケット一側足場2本建地 | |||
低層住宅工事用二側足場 |
引用:建設業労働災害防止協会「足場の組立て等作業の安全」
上の表には記載していませんが、次世代足場も作業床の大きさで積載荷重が決まります。
490mmの作業床を1枚使用した場合の積載荷重は245kg、2枚使用した場合の積載荷重は490kgになります。
しかし、足場の1スパンあたりの最大積載荷重は400kgなので、載せていい重量は400kgまでということになります。
このように、足場の最大積載荷重は作業床の許容積載荷重と同じになるわけではなく、足場の状況によって変わります。
つまり、足場の最大積載荷重と作業床の許容積載荷重のどちらか低い方が、載せられる重量の上限になります。
また、梁枠上の積載荷重には注意が必要です。
足場構面にくさび式足場用梁枠により設置した開口部の上部は鉛直荷重によるたわみが大きくなります。
このため、開口部の上部は積載荷重を低減させる必要があります。
まとめ
足場の最大積載荷重と許容積載荷重について解説いたしました。
- 足場の最大積載荷重とは、1スパンあたりに載せられる最大の重量のことです。
- 足場の許容積載荷重とは、作業床1枚あたりに載せられる最大の重量のことです。
- 最大積載荷重は、作業員に周知させるために表示する必要があります。
- 作業床の幅、枚数が増えれば積載荷重は大きくなります。
- 足場の種類ごとに最大積載荷重、許容積載荷重は異なります。
- 開口部の上部はたわみが大きくなるので積載荷重を低減させる必要があります。
最大積載荷重と許容積載荷重を理解し、足場工事に役立てて下さい。