足場工事の基礎知識

足場組立作業主任者になるには?受ける試験や難易度は?

足場工事に必須である「足場の組立て等作業主任者」ですが、なるためには資格を取らなければなりません。

本記事では、足場の組立て等作業主任者のなりかた、試験の内容、難易度、助成金等について徹底解説いたします。

足場の組立て等作業主任者とは?

足場の組立て等作業主任者とは、高所作業用に組み立てられる足場の組立て、解体の際に監督・指導にあたる責任者のことをいいます。

例えば、ビル建築や建屋の改装などの足場工事において、工程管理、作業の指導、工具点検、墜落制止用器具やヘルメットなどの使用状況を監視したり、指導したりします。

この足場の組立て等作業主任者は、「足場の組立て等作業主任者技能講習」を修了することでなることができます。

つり足場、張出し足場又は高さ5m以上の構造の足場の組み立て、解体、変更の作業を行う場合、足場の組立て等作業主任者技能講習を修了した者を作業主任者として選任しなければなりません。

これは、労働安全衛生法、労働安全衛生法施行令で定められています。

労働安全衛生法

(作業主任者)

第十四条 事業者は、高圧室内作業その他の労働災害を防止するための管理を必要とする作業で、政令で定めるものについては、都道府県労働局長の免許を受けた者又は都道府県労働局長の登録を受けた者が行う技能講習を修了した者のうちから、厚生労働省令で定めるところにより、当該作業の区分に応じて、作業主任者を選任し、その者に当該作業に従事する労働者の指揮その他の厚生労働省令で定める事項を行わせなければならない。

引用:e-gov

労働安全衛生法施行令

(作業主任者を選任すべき作業)

第六条 法第十四条の政令で定める作業は、次のとおりとする。

十五 つり足場(ゴンドラのつり足場を除く。以下同じ。)、張出し足場又は高さが五メートル以上の構造の足場の組立て、解体又は変更の作業

引用:e-gov

足場の組立て等作業主任者の受講資格

足場の組立て等作業主任者の受講資格は以下の通りです。

  • 足場の組立て、解体又は変更の作業に、18歳より3年以上従事した経験を有する者。
  • 大学、高等専門学校または高等学校において、土木、建築又は造船に関する学科を卒業し、その後、2年以上足場の組立て、解体または変更の作業に従事した経験を有する者。
  • 職業能力開発促進法に基づく一定の訓練を修了し、その後2年以上足場の組立て、解体または変更の作業に従事した経験を有する者。

上記のいずれかの条件を満たせば受講することができます。

「3年以上従事した経験」とありますが、働いた日数を1日1日数えて換算するのではなく、働き始めてからその仕事を続けて3年経てば受講資格を満たすことができます。

実務経験の証明として、通常は事業者が証明する必要があります。

しかし、事業者が廃業してしまい、証明が難しい場合は、元同僚等の経験年数について証明できる方2人の記名、押印、身分証明書の提出が必要になります。

実務経験従事証明書

備考

3 事業場の倒産等により事業者による証明が不可能である場合には、実務に従事していた事業場(以下、「元の事業場」という。)の同僚であった者(以下、「証明者」という。)による証明をもって事業者証明に代えることができます。ただしこの場合にあっては、証明者の数は原則2名とし、様式中「事業場所在地」は「元の事業場所在地」、「事業場名称」は「元の事業場名称」、「事業者職名・氏名」は「証明者の現住所、連絡先(勤務先)電話番号、証明者署名もしくは記名押印」と読み替え、それぞれの証明者について本人確認証明書の添付が必要です。

引用:厚生労働省

免許、技能講習、特別教育の違い

資格は、免許、技能講習、特別教育の3つに分けられますが、足場の組立て等作業主任者は技能講習に含まれます。

なぜこのように分けられているかというと、作業の危険度によって必要な知識や経験が違うためです。

例えば、クレーンの運転業務では、荷重5t以上の移動式クレーンを使用するには免許が必要であり、荷重1t以上の移動式クレーンを使用するには技能講習を受ける必要があり、荷重1t未満の移動式クレーンを使用するには特別教育を受ける必要があります。

このように、荷重が増えて危険度が増えれば増える程必要な経験や知識が増えるため、免許、技能講習、特別教育と分けられています。

足場の組立て等作業主任者の講習コース

足場の組立て等作業主任者は、学科講習を受講すること、修了試験に合格することで資格を取得することができます。

基本的には、1日目に7時間の学科講習、2日目に6時間の学科講習と修了試験というスケジュールです。

具体的な講習内容は、作業方法をはじめとする工事用設備、器具や環境などの知識、法令についてです。

しかし、既に取得している資格や実務経験によって受ける講習コースが異なり、学科講習の一部が免除される場合があります。

コースの該当者、講習科目、講習時間を表にまとめましたので、参考にしてください。

Aコース

下記のいずれかに該当する受講者は、Aコースになります。

  • 満21歳以上で、足場作業に3年以上従事した経験を有する者
  • 満20歳以上で、大学、専門、高校、中学において土木、建築又は造船に関する学科を専攻した者で、その後2年以上足場作業に従事した経験を有する者
内容 時間

作業の方法に関する知識 7時間
工事用設備、機械、器具、作業環境等に関する知識 3時間
作業者に対する教育等に関する知識 1.5時間
関係法令 1.5時間
学科試験 1時間

講習時間は1日目に7時間、2日目は6時間です。

講習料金は受講料とテキスト代で14,000円前後です。

Bコース

下記のいずれかに該当する受講者は、Bコースになります。

  • 満20歳以上で、別添による訓練を修了し、足場作業に2年以上従事した経験を有する者
  • Aコースのいずれかに該当する者で、職業能力開発促進法施行令別表第1に掲げる、とび1級、2級の技能試験に合格した者
内容 時間

作業者に対する教育等に関する知識 1.5時間
関係法令 1.5時間
学科試験 1時間

講習時間は1日目は無しで、2日目は3時間です。

講習料金は受講料とテキスト代で11,000円前後です。

Cコース

下記に該当する受講者は、Cコースになります。

  • Aコースのいずれかに該当する者で、職業能力開発促進法第28条第1f項に規定する職業能力開発促進法施行規則別表第11の免許職種の欄に掲げる、とび科の職種に係る職業訓練指導員免許を受けた者
内容 時間

関係法令 1.5時間
学科試験 1時間

講習時間は1日目は無しで、2日目は1.5時間です。

講習料金は受講料とテキスト代で11,000円前後です。

人材開発支援助成金について

足場の組立て等作業主任者の技能講習は「人材開発支援助成金」の対象です。

人材開発支援助成金の中でも、足場の組立て等作業主任者の技能講習は建設労働者技能実習コースに区分されます。

この助成金は、建設労働者の雇用改善、技能向上を目的として技能講習や特別教育を受講させた中小企業が受給できる制度です。

受給するには講習受講時に申請が必要になりますので、その対象者や流れを解説いたします。

対象となる建設事業主

助成金を受給するには、以下の全ての条件を満たしている必要があります。

  • 資本金額もしくは出資総額が3億円以下、または従業員数300人以下
  • 「建設の事業」の雇用保険料率の適用を受けている
  • 受講者が雇用保険に加入していること
  • 講習料金の支払いが事業主であること
  • 雇用保険料の支払を滞納していないこと
  • 雇用管理責任者を選任していること
  • 親族のみの建設事業者でないこと

被保険者のうち、契約社員、派遣社員などは対象外になります。

この助成金の対象となる労働者は雇用保険法第4条に規定する被保険者のうち、次の者を除いた者となります。有期契約労働者(期間の定めのある労働契約を締結する労働者)、短時間労働者(短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律第2条に規定)、派遣労働者(労働者派遣事業の適正な運営の確保および派遣労働者の保護等に関する法律第2条に規定))

引用:厚生労働省

助成金受給までの流れ

助成金申請の流れは以下の通りです。

  1. 受給資格の確認
  2. 講習会申込
  3. 講習会受講
  4. 申請書類受け取り
  5. 関係書類提出
  6. 助成金受給

受給資格の確認は、公共職業安定所(ハローワーク)で確認することができます。

ホームページから講習会の申請をする場合、講習会申込時に助成金の申請有無を選択することができます。

FAXから申し込む場合は、空いたスペースに助成金申請の旨、受講者名を記入しなければならないのでご注意下さい。

助成金申請の書類は、受講後1ヶ月前後で労働技能講習協会から郵送されます。

助成金申請書類を記入したら、管轄の労働局へ提出してください。期限は受講後2ヶ月以内なのでご注意下さい。

足場の組立て等作業主任者の難易度

足場の組立て等作業主任者の試験難易度は、比較的やさしいです。

講習はテキストに沿って進められますが、テキストを読み、講師の話をしっかりと聞いていれば合格できます。

また、講師が重要な箇所を教えてくれるので、聞き逃さずにマーカーで線を引くなどしておくと試験前に復習がしやすいです。

足場の組立て等作業主任者の資格は、とび職の中でも収入アップが期待できる資格の一つです。

足場工事において、足場組立作業主任者は必要不可欠で、安定した需要が続くと予想されます。

資格を取得し、キャリアアップに繋げましょう。

まとめ

足場の組立て等作業主任者について解説いたしました。

  • 足場の組立て等作業主任者とは、高所作業用に組み立てられる足場の組立て、解体の際に監督・指導にあたる責任者のことをいいます。
  • 事業者は、つり足場、張出し足場又は高さ5m以上の構造の足場の組み立て、解体、変更の作業を行う場合、足場の組立て等作業主任者技能講習を修了した者を作業主任者として選任しなければなりません。
  • 足場の組立て等作業主任者の講習を受講するには、条件を満たし、事業者による照明が必要です。証明が難しい場合は、同僚等の証明できる人2名の記名、押印、身分証の提出が必要です。
  • 資格は、免許、技能講習、特別教育に分かれますが、足場の組立て等作業主任者は技能講習に含まれます。
  • 足場の組立て等作業主任者の講習は、Aコース、Bコース、Cコースの3つに分かれており、基本的には1日目に7時間の学科講習、2日目に6時間の学科講習と修了試験というスケジュールです。
  • 足場の組立て等作業主任者の技能講習は「人材開発支援助成金」の対象です。
  • 足場の組立て等作業主任者の試験難易度は、比較的やさしいです。テキストを読み、講師の話をしっかりと聞いていれば合格できます。

足場の組立て等作業主任者の試験や内容、難易度等について理解し、足場工事に役立てて下さい。