10数年に1度行われるマンションの大規模修繕工事。
本記事では、マンションの大規模修繕に掛かる費用・相場を解説いたします。
大規模修繕とは?
大規模修繕とは、10数年ごとに行うマンションのメンテナンス工事のことです。
マンションや戸建てに関わらず、建物であれば年月が経てば経つほど劣化していきます。
戸建ての場合は、外壁塗装などのメンテナンス工事を住居者の都合に合わせて予定しますが、マンションの場合は住所者全員の都合に合わせることは難しいため、長期修繕計画に沿って実施されます。
この工事を行わないと、見た目が悪くなるほか、外壁の劣化が進み、防音機能の低下や雨漏り、タイルが剥がれ落ちるなどの問題が発生します。
安心して快適に暮らすために大規模修繕は必要不可欠です。
具体的にどのようなことをするかというと、建物を囲む足場を組み、外壁、バルコニー、屋上、配管などの修繕、交換を行います。
大規模修繕のタイミングに合わせて宅配ボックスやオートロックを設置したり、マンション自体をリニューアルする場合もあります。
主な工事内容は以下の通りです。
工事名 | 内容 |
仮設工事 | 直接仮設工事と共通仮設工事があり、それぞれ内容が違います。
直接仮設工事とは、大規模修繕のメインの作業を行うための足場工事です。建物の周囲に足場を組み立て、塗料や資材が外部に落下するのを防ぐためにメッシュシートなどの養生を行います。 また、高さ10mごとに朝顔と呼ばれる防護柵や、防犯対策としてカメラを設置することもあります。 共通仮設工事とは、作業員の事務所や資材置き場などの、大規模修繕に間接的に必要になる設備を設置します。 その際に必要な電気、水道、インターネットなどのインフラを整備するのもこの工事になります。 |
下地補修工事 | 天井、壁などを調査し、コンクリートのひび割れを補修する工事です。
具体的な補修方法は、エポキシ樹脂をひびの部分に充填したり、ひびに沿って新たに溝を作り、シーリング材を充填したり状態によってさまざまです。コンクリート内の鉄筋にまで錆が侵食している場合、コンクリートを撤去し、錆を除いた上で埋め戻すという大がかりな内容の工事もあります。 下地はマンションの寿命に影響する部分ですので、状態を見極めて適切な工事内容を選択しなければなりません。 |
シーリング工事 | 外壁、サッシまわりなどに使われているシーリング材を取り替える工事です。
シーリング材は、放置しておくと防水性や気密性が失われ、雨漏りや建物の劣化の原因になります。 シーリング材は10年~15年で取り替える必要があります。シーリング工事のみで行われる場合もありますが、足場を組み立てる必要があるため、大規模修繕と一緒に行うのが一般的です。 |
塗装工事 | 外観を保つほかに、雨風からコンクリートを保護するために行われます。
塗装工事には外壁塗装工事と鉄部塗装工事があります。 外壁塗装工事は、外壁の塗り直しが主な内容です。まず、状態を確認するために下地と塗膜の付き具合を検査します。付き具合が一定以上であれば、上から塗装し、一定以下であれば一度剥がし、塗り直します。塗料にはさまざまな種類があり、シリコン塗料やフッ素塗料などがありますが、状態に合わせて選択し、均一に塗装することが重要になります。 鉄部塗装工事は、鉄の錆止めのために行われる工事です。具体的には、鉄製の扉、階段、手すりなどが対象です。サンドペーパーで錆を除去し、錆止め、中塗り、上塗りと順に行い、鉄を錆から保護します。 |
防水工事 | 雨漏りを防止するための工事です。防水工事を行うことで水の侵入を防ぎ、マンションの寿命を伸ばします。具体的には、屋根、ベランダ、外階段などの雨にさらされている部分が対象です。屋根にはウレタン、アスファルト、塩化ビニル樹脂シートなどの防水素材を使用します。
ベランダの防水工事は足場がないと出来ないため、大規模修繕と一緒に行うことが多いです。 |
大規模修繕の費用・料金相場
大規模修繕の相場を、戸あたりの金額と1㎡あたりの金額を紹介します。
大規模修繕の費用は、修繕積立金によって計画的に積み立てられます。金額は専有面積によって変動し、広い部屋の方が多く支払います。
また、修繕積立金は、管理費とは別なので注意が必要です。管理費とは、廊下、共用部分の清掃、日常のメンテナンスに使われる費用のことです。
戸あたりの金額
1回目の大規模修繕の費用、相場は、1戸あたり75万円~120万円、平均で100万円となっています。
マンション全体でみると、30戸で3000万円、100戸で1億円前後かかる見込みです。
2回目の平均は97万円、3回目の平均は80万円になります。
マンション大規模修繕工事に関する実態調査
大規模修繕工事の戸あたり75万円~100万円は30.6%、戸あたり100万円~125万円は24.7%、戸あたり50万円~75万円は13.8%となっている。
大規模修繕工事回数 | 下位25% | 中央値 | 上位25% | 平均 |
1回目 | 73.5万円/戸 | 98.7万円/戸 | 117.9万円/戸 | 100.0万円/戸 |
2回目 | 76.2万円/戸 | 95.6万円/戸 | 119.8万円/戸 | 97.9万円/戸 |
3回目 | 55.1万円/戸 | 77.3万円/戸 | 105.7万円/戸 | 80.9万円/戸 |
引用:国土交通省
面積あたりの金額
1回目の大規模修繕の費用、相場は、1㎡あたり5,000円~20,000円、平均で13,000円となっています。
マンションの1戸あたりの平均面積は、75㎡前後ですので
75㎡ ✕ 13,000円/㎡ = 975,000円
上で紹介した戸あたりの金額、100万円と近い数字になります。
2回目の平均は14,600円、3回目の平均は11,900円となります。
マンション大規模修繕工事に関する実態調査
- 大規模修繕工事の㎡あたり10,000円~15,000円は41.1%、㎡あたり5,000円~10,000円は31.8%、㎡あたり15,000円~20,000円は10.0%となっている。
大規模修繕工事回数 | 下位25% | 中央値 | 上位25% | 平均 |
1回目 | 8,483.7円/㎡ | 10,647.9円/㎡ | 13,426.4円/㎡ | 13,095.9円/㎡ |
2回目 | 9,144.7円/㎡ | 11,752.4円/㎡ | 15,538.8円/㎡ | 14,634.9円/㎡ |
3回目 | 7,530.8円/㎡ | 10,626.4円/㎡ | 13,523.3円/㎡ | 11,931.0円/㎡ |
引用:国土交通省
マンションの状態や形状により、金額は変動する
ここまで、大規模修繕の料金相場を紹介しましたが、マンションの状態や形状によって変動します。
例えば、複雑な形状をしているマンションでは、仮設足場やゴンドラの設置に伴う手間が増え、費用が高くなります。
近年、セキュリティ設備などの防犯性を考えた付加設備を設置することが増えてきています。防犯性が高くなることは安心した住まいに繋がりますが、その分費用も高くなります。
また、機械式駐車場がある場合はマンションの修繕費とは別に加算されるので注意が必要です。
マンションごとに掛かる費用が変わってきますので、上で紹介した相場はあくまで目安として考えて下さい。
まとめ
マンションの大規模修繕の内容や、費用・相場について解説いたしました。
- 大規模修繕とは、安心して快適に暮らすために行われるメンテナンス工事のことです。
- 大規模修繕の内容は、仮設工事、下地補修工事、シーリング工事、塗装工事、防水工事など、さまざまな工事を行います。
- 大規模修繕の費用・相場は1戸あたり100万円前後で、1㎡あたり13,000円前後です。
- マンションの状態や形状により費用は変動します。
大規模修繕の料金相場を理解し、足場工事に役立てて下さい。