仮設現場においてなくてはならない足場の壁つなぎ。あなたは十分に理解していますか。この記事では、壁つなぎを取り付ける目的や設置基準、仕組みや取り付け方などを徹底解説していきます。壁つなぎは作業者の、そして近隣住民の命を守る大切な部材です。これを機に、よく理解しておきましょう。
足場の壁つなぎとは
足場の「壁つなぎ」とは、足場を壁に固定する道具、またはその作業のことを言います。基本的には、「壁つなぎ専用金物」と呼ばれる部材を使って足場と建物を連結しますが、建物の構造や工事の種別によっては壁つなぎ専用金物が設けられない場合もあります。その場合は、単管パイプなどを用いて建物と足場を固定します。
ただし単管パイプでの壁つなぎは、許容耐力が落ちます。強度計算をする場合は、足場の設置場所や養生材の違いに作用する風荷重だけでなく、壁つなぎ部材の種別をしっかりと把握しておくことが必要です。
足場の壁つなぎの目的
足場に壁つなぎを取り付ける目的は、足場全体の倒壊を防止することです。足場と建物を直接固定することにより、風荷重による倒壊や、偏心荷重による倒壊を防ぎます。
「足場はそう簡単に倒れないだろう」と思う方もいるかもしれませんが、足場の壁つなぎを設置しなかったことが原因で大事故が発生しています。
2012年、埼玉県東松山市のマンション改修現場で足場が倒れ、保育園児2人が死傷した事故です。当時の責任者は、「元請け業者から壁に穴を開けていいとの指示がなかったため、屋上から足場をつなぐよう指示した」と話していますが、このときの判断を、未だに後悔していることでしょう。
同じような悲しい事故を起こさないためにも、壁つなぎを取り付ける目的を今一度認識しておいてください。
足場の壁つなぎの設置基準
足場の壁つなぎは、労働安全衛生法に基づく労働安全衛生規則570条において、設置が義務付けられています。具体的な内容は以下のとおりです。
【労働安全衛生規則 第570条(鋼管足場)】
事業者は、鋼管足場については、次に定めるところに適合したものでなければ使用してはならない。
(一から四省略)
五 一側足場、本足場又は張出し足場であるものにあつては、次に定めるところにより、壁つなぎ又は控えを設けること。イ 間隔は、次の表の上欄に掲げる鋼管足場の種類に応じ、それぞれ同表の下欄に掲げる値以下とすること。
足場の種類
間隔(単位メートル) 垂直方向
水平方向
単管足場
5 5.5
わく組足場(高さが5m未満のものを除く) 9 8
ロ 鋼管、丸太等の材料を用いて、堅固なものとすること。
ハ 引張材と圧縮材とで構成されているものであるときは、引張材と圧縮材との間隔は、1m以内とすること。
(以下略)
(引用:安全衛生情報センター)
労働安全衛生規則にあるとおり、壁つなぎまたは控えの間隔は、単管足場は垂直方向5m以下、水平方向5.5m以下にしなくてはなりません。単管足場と座屈強度が同等とされるくさび緊結式足場も、同様の扱いです。
一般的には、建地と布の交点、つまり1層1スパンの四角形の四隅にあたる位置に設置するのが最も効果的とされます。ビケ足場の層の高さは1.9m、スパンの最大長さは1.8mなので、2層3スパン以内ごとの腕木材の位置に設けることで、労働安全衛生規則の規定を満たすことができます。
ただし、メッシュシート、ネットフレーム、シート、鋼製朝顔などを取付ける現場は、風荷重や偏心荷重等を考慮して壁つなぎの間隔はできるだけ細かく入れてください。
壁つなぎには、躯体側の設置可能箇所にも制約があります。躯体と足場の位置関係によっては、腕木材の位置に壁つなぎを設けることができない場合もあります。その場合は、取付位置をずらして設置し、所定の間隔以内になるようにしましょう。
足場の壁つなぎの仕組み
足場の壁つなぎは、専用金物を使用する場合と、単管パイプを使用する場合があります。以下では、専用金物を使用する場合について、使う部材の種類や仕組みをご紹介します。
壁つなぎ専用金物
壁つなぎ専用金物は一端がクランプ、もう一端が雄ネジ形状となっている部材です。クランプ側がジャッキ機構になっており、足場と建物の離れによって長さを調整することができます。
躯体打ち込みインサート
鉄筋コンクリート造などにおいては、壁つなぎ金物受けとなる「インサート」を、コンクリート打ち込み前に取り付けるのが一般的です。インサートは壁つなぎのネジ径にあったw1/2のメスネジと型枠と挟み込むためのキャップがついています。
形状は、メーカーによって異なりますが、あとからシールや無収縮モルタルで壁つなぎ孔を潰せるように加工したものなどもあります。外壁の仕上げによってこれらを採用しましょう。
先付けプレートアンカー
壁つなぎ専用金物を使う場合でも、鉄骨造やALC・ECP、外装が金属パネルなどの場合は、使用するインサートが異なります。インサートの強度を担保するために確実な部材が、先付タイプの「プレートアンカー」です。
プレートアンカーは、一端が壁つなぎ専用金物が取り付くナット、もう一端がプレート形状になっています。このプレート部を鉄骨や胴縁に先に溶接固定で取り付けます。(溶接の場合は工場溶接が必要です。)
後付けプレートアンカー
壁つなぎ専用金物を取り付ける受けナットには、「後付けプレートアンカー」と呼ばれるものもあります。先ほど解説した「先付けプレートアンカー」と名前が似ていますが、内容は全く異なるので、使用の際は注意しましょう。
後付けプレートアンカーは、一端が壁つなぎ専用金物の受けナット、もう一端がビス形状になっているものがほとんどです。”後付け”と言う名前の通り、ALC,ECPなどの外装仕上げを施工したあとに取り付けます。
ビス固定のため、許容耐力はビスの引き抜きによって決まります。一般的には、壁つなぎ専用金物の耐力より低くなるので、強度検討の際には、メーカーの許容耐力を必ず確認するようにしましょう。
また、後付けプレートアンカーが使用できるのは改修工事などの限られた場合のみです。新築では基本的に採用しないことを認識しておきましょう。
足場の壁つなぎの取り付け方
壁つなぎの取り付け方は、壁の材質や構造によりますが、壁の下地にある木造の柱や鉄骨、コンクリートに穴を開けて、インサートやアンカーを打ち込むか溶接をして、そこに壁つなぎを接続します。作業が終わってからは、しっかり穴をふさぎ、外観に影響がないか確認して補修作業を行いましょう。
足場の壁つなぎが使えない場合はどうする?
足場の壁つなぎが使えない場合はどのような対応をとればよいのでしょう。例えば新築工事用足場は、ビル工事用足場ほどの強度を要しない半面、足場先行工法として組み上げられることがほとんどで、足場自体の自立安定性が求められます。また、建物の構造から壁つなぎの設置が敬遠されることも多く、かつ敷地が狭あいで足場の外側に控えを設けることが困難な場合もあります。
こうしたことから、厚生労働省は、「足場先行工法に関するガイドライン」を公表し、壁つなぎ等による足場の補強の基準を定めています。先行工法で立てられた足場については、足場の自立安定性を確保する観点から、「各面に控えを設けること」とし、控えを設けることが困難な場合は「全周を緊結した構造とする」としています。
一方、建方作業が終了したあとは、「全周を完全に組み上げ」て各面に壁つなぎを設ける必要があります。壁つなぎの設置は、労働安全衛生規則が「壁つなぎまたは控え」としていることから、建方作業前に各面に控えを設置している場合は要求されず、また、壁つなぎ、控えのいずれも設置が困難な場合は、「火打ち及び圧縮材等」での代用が可能です。
足場の構面が長い場合は、火打ちと圧縮材の効果が構面中央に及ばないため、中央部に控えを設置するか、控えが困難な場合は「頭つなぎ」で補強することになります。
まとめ
この記事では、足場の壁つなぎの設置基準や仕組み、取り付け方などを徹底解説しました。足場の壁つなぎとは、足場を壁に固定する道具、またはその作業のことを言います。壁つなぎを取り付ける目的は、足場全体の倒壊を防止することです。
壁つなぎは基本的に、「壁つなぎ専用金物」と呼ばれる部材を使って、足場と建物を連結します。壁の材質や構造により、インサートを使うかアンカーを使うか、打ち込むか溶接をするかが異なります。事前にきちんと判断したうえで、使う部材や設置の方法を決めましょう。
壁つなぎは、労働安全衛生法に基づく労働安全衛生規則570条において、設置が義務付けられています。重大な事故を招かないためにも、必ず設置するようにしましょう。皆さまがこれからも安全に作業できますように、心からお祈りしています。
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