工事における仮囲いとは、どのような目的で設置するものなのでしょうか。
仮囲いの目的やメリット、基準を併せて解説いたします。
仮囲いとは?
仮囲いとは、工事現場や資材置き場などの周囲を、鋼板や波板などの防護板で囲う仮設工事のことです。
工事全般に言えることですが、隣接する敷地や道路、周囲の状況に配慮して作業しなければなりません。
工事現場で働く作業員が安全に作業することが出来て、周辺の通行人や住民が安心して過ごせるような環境を作らなければなりません。
その為に、工事における仮囲いはとても重要な役割を担っていると言えます。
また、耐久力を上げるために、さまざまな金属と配合した防護板も存在します。
例えば、ガルバリウム安全鋼板は、アルミと亜鉛を配合しており、通常のメッキ鋼板よりも3倍以上の耐久力があります。塩害地域や工業地域などで効果を発揮します。
他にも、軽量化を目的としたPVC(塩化ビニル)製の防護板も存在します。
長さ2000mmの通常の万能鋼板の重さは12kgですが、PVC製の防護板は5kgしかありません。
さらに絶縁性や防炎性も兼ね備えているので、安全性も高いです。
仮囲いの目的
仮囲いは、主に安全確保、第三者の災害防止、盗難の防止、騒音防止、粉塵の飛散防止などの目的で設置されます。
例えば、小学校や公園など、子供が多く居る場所での現場では、防護板が子供の進入を防ぎ、危険を排除することが出来ます。
また、長期的に仮囲いをする場合は、警備会社と連携し、防犯システムを設置して盗難を防止することもあります。
仮囲いがあることで安全安心の作業環境を作ることが出来ます。
仮囲いのメリット
仮囲いのメリットはたくさんありますが、今回は4つに絞って解説いたします。
関係者以外の立ち入りを防ぐ
上でも解説いたしましたが、第三者の立ち入りを防ぐことが大きなメリットになります。
防護板で仕切られているため、工事範囲が明確にわかります。
特に掘削作業が行われている場合は、作業者の出入りや重機の移動などがあるため、大変危険です。
一般の人が知らずに立ち入ってしまうと大事故に繋がります。
そのリスクを減らすためにも、仮囲いで第三者の進入を防ぎます。
工事で発生する騒音を減らす
工事中は必ずと言っていいほど騒音が発生します。
重機の油圧の音、物と物がぶつかり合う音などさまざまです。
周囲が住宅で囲まれている現場では、住民の快適な暮らしを損ねないように気を付けなければなりません。
仮囲いを行うことで騒音を抑えることが出来ます。
粉塵、資材、道具が敷地外へ出ることを防ぐ
仮囲いは、工事現場から敷地外へ粉塵が飛散してしまったり、資材が床に落ちて転がったりすることを防ぎます。
粉塵が舞うと、住民が吸ってしまったり、車や家などを汚してしまう可能性があります。
粉塵以外にも、資材や道具が敷地外へ出ることも考えられます。
特に、サンダーや電動ノコギリなどの危険な道具が敷地外へ出てしまうと大変危険です。
仮囲いがあれば、外へ出そうになった粉塵や資材、道具が防護板に阻まれ、敷地外へ出ることを防ぎます。
周辺の景観を保つ
防護板がなければ作業中の重機や、建設中の建物などがむき出しになってしまいますが、仮囲いをすることで景観を保つことが出来ます。
最近では、街の風景に合わせて木や葉のデザインが描かれていたり、イラストが描かれているものも存在します。
仮囲いの基準
安全で安心した環境を作る上で、さまざまなメリットがある仮囲いですが、好き勝手自由に設置して良いというわけではありません。
建築基準法施行令で、仮囲いの基準が定められています。
第七章の八 工事現場の危害の防止
(仮囲い)
第百三十六条の二の二十
木造の建築物で高さが十三メートル若しくは軒の高さが九メートルを超えるもの又は木造以外の建築物で二以上の階数を有するものについて、建築、修繕、模様替又は除却のための工事(以下この章において「建築工事等」という。)を行う場合においては、工事期間中工事現場の周囲にその地盤面(その地盤面が工事現場の周辺の地盤面より低い場合においては、工事現場の周辺の地盤面)からの高さが一・八メートル以上の板塀その他これに類する仮囲いを設けなければならない。ただし、これらと同等以上の効力を有する他の囲いがある場合又は工事現場の周辺若しくは工事の状況により危害防止上支障がない場合においては、この限りでない
引用:e-Gov
高さ13m(軒の高さ9m)を超える、2階建て以上の木造建築物の建築、修繕、模様替えを行う場合、1.8m以上の板塀や、同様の仮囲いをしなければなりません。
よく防護板に使われている万能鋼板は、高さ2m以上に設定されているものが多いため、1.8mを下回ることはなさそうですが、覚えておく必要があります。
出入口の基準
出入口を設置する時の基準も定められているので、併せて解説します。
建設省事務次官が通達する「建設工事公衆災害防止対策要綱(建築工事編)」では、出入口は適切に設置し、維持管理しなければならないとし、以下の点に従うように書かれています。
- できる限り交通の支障が生じないような場所に設置すること。
- 開放時に、車両が出入り出来るだけの高さと幅を有すること。
- 必要がない限りは閉鎖し、公衆の出入りを禁ずるという旨の表示を行うこと。
- 車両の出入りが頻繁で、長時間開放しておく場合、見張り員を配置し、車両の誘導にあたらせること。
- 扉の構造は引き戸か、内開きにすること。
第三者の立ち入りを防ぐという点で、出入口は仮囲いの盲点ですので、開放時のルールが細かく決められています。
道路占用許可の基準
仮囲いが、現場のスペース上歩道や道路に設置しなければならない場合は、道路占用許可を取得する必要があり、その基準も定められています。
例えば、東京都の占用規則では
- 歩道においては、1m以下で幅員の1/3以下であり、かつ1.5m以上の余地が確保されていること。
- 車道においては、1m以下で幅員の1/8以下であること。
と決められています。地域によって許可基準が違いますので、申請前にご確認下さい。
まとめ
仮囲いの目的、メリット、基準について解説いたしました。
- 仮囲いとは、工事現場や資材置き場などの周囲を、鋼板や波板などの防護板で囲う仮設工事のことです。
- 防護板には耐久力を上げたものや軽量化したものなどの種類があります。
- 仮囲いは、主に安全確保、第三者の災害防止、盗難の防止、騒音防止、粉塵の飛散防止などの目的で設置されます。
- 仮囲いは、関係者以外の立ち入りを防ぐ、工事で発生する騒音を減らす、粉塵、資材、道具が敷地外へ出ることを防ぐ、周囲の景観を保つなどのメリットがあります。
- 高さ13m(軒の高さ9m)を超える、2階建て以上の木造建築物の建築、修繕、模様替えを行う場合、1.8m以上の板塀や、同様の仮囲いをしなければならないという基準があります。
- 出入口は第三者の立ち入りを防ぐ目的の盲点になるので、細かい決まりが定められています。
- 車道や歩道に仮囲いを設置する場合、道路占用許可を取得する必要があり、地域ごとに基準が決められています。
仮囲いの目的やメリットを理解して、作業に役立てて下さい。