足場階段の設置基準について、考えたことはありますか?足場で作業を行う際は、つい作業場にばかり気を取られてしまいがちですが、足場階段も、作業者の命を守るための大切な部材のひとつです。この記事では、そんな足場階段の設置基準について、法律やガイドラインを交えながら詳しく解説していきます。正しく理解して、より安全性の高い足場を組んでいきましょう。
足場階段の設置基準
足場階段の設置基準は、法律等でどのように定められているのでしょうか。またその法律等を踏まえ、どのようなポイントに気を付けて設置すればよいでしょうか。以下で解説していきます。
足場階段の設置基準に関する法律やガイドライン
まずは、足場階段の設置基準に関する法律やガイドラインを3つご紹介します。
足場階段の必要性に関する法律
そもそも足場階段は、必ず取り付けなければならないのでしょうか。足場階段の必要性については、「労働安全衛生規則」の「第526条」で以下のように定められています。
【労働安全衛生規則】第526条(昇降するための設備の設置等)
- 事業者は、高さ又は深さが1.5mをこえる箇所で作業を行なうときは当該作業に従事する労働者が安全に昇降するための設備等を設けなければならない。 ただし、安全に昇降するための設備等を設けることが作業の性質上著しく困難なときは、この限りでない。
- 前項の作業に従事する労働者は、同項本文の規定により安全に昇降するための設備等が設けられたときは、当該設備等を使用しなければならない。
したがって高さ(または深さ)が1.5mを超えるところで作業を行うときは、安全に昇降するための設備を必ず設けなければなりません。
昔は専用の階段が標準的に付帯しておらず、昇降設備と言えば「はしご」しかありませんでしたが、現代では専用の階段が用意されているので、やむを得ない場合以外は必ず利用するようにしましょう。
足場階段の設置基準に関する法律
足場階段を設置する際は、どんなも部材を取り付ければよいのかも気になるところですよね。これについても、「労働安全衛生規則」で以下のように基準が定められています。
【労働安全衛生規則】第552条(架設通路) ※足場階段も架設通路の一部です
- 事業者は、架設通路については、次に定めるところに適合したものでなければ使用してはならない。
- 丈夫な構造とすること。
- こう配は、30°以下とすること。ただし、階段を設けたもの又は高さが2m未満で丈夫な手掛を設けたものはこの限りでない。
- こう配が15°をこえるものには、踏さんその他の滑止めを設けること。
- 墜落の危険のある箇所には、次に掲げる設備(丈夫な構造の設備であつて、たわみが生ずるおそれがなく、かつ、著しい損傷、変形又は腐食がないものに限る。)を設けること。 ただし、作業上やむを得ない場合は、必要な部分を限つて臨時にこれを取りはずすことができる。①高さ85cm以上の手すり②高さ35cm以上50cm以下のさん又はこれと同等以上の機能を有する設備
- たて坑内の架設通路でその長さが15m以上であるものは、10m以内ごとに踊り場を設けること。
- 建設工事に使用する高さ8m以上の登りさん橋には、7m以内ごとに踊り場を設けること。
以上のことから、足場階段には踏み外しや転倒を防止するための一定の制約があり、踏面には滑り止めの効果をもたせるなどの対策が必要であることが分かります。
足場階段の踏面の幅・けあげ高さに関するガイドライン
足場階段の踏面の幅やけあげ高さについても「足場先行工法のガイドライン」にて以下のように決められています。
【足場先行工法のガイドライン】(11)昇降設備
足場には階段を設置。階段の踏面は等間隔で設け、幅は20cm以上、けあげの高さは30cm以下とし、手すりを設置。
(引用:厚生労働省)
階段の踏面が狭すぎたり、けあげの高さが高すぎたりすると、踏み外し事故につながり兼ねないので注意しましょう。
足場階段を設置する際のポイント
前述した3つの法律やガイドラインを踏まえ、足場階段を設置する際のポイントを以下にまとめました。
- 高さ(または深さ)が1.5mを超えるところで作業を行うときは、安全に昇降するための設備を必ず設置する
- 丈夫な構造のものを使う
- こう配が15°を超える階段には、踏さんその他の滑止めを設ける
- 高さ85cm以上の手すりを設ける
- 高さ35cm以上50cm以下のさん又はこれと同等以上の機能を有する設備を設ける
- 高さ8m以上の登りさん橋には、7m以内ごとに踊り場を設ける
- 階段の踏面は等間隔で、幅20cm以上、けあげ高さ30cm以下にする
足場階段を設置する際は、これらの決まりを必ず守りましょう。
ただし、現場によっては階段の設置が難しい場合もあるでしょう。その場合は、垂直のハシゴの上端を屋根面から60㎝以上、突き出すように取り付けるようにしてください。(労働安全衛生規則556条より)
足場階段の踊り場の必要性
足場階段の設置基準とセットで覚えておきたいのが「足場階段の踊り場」についてです。
前述した「労働安全衛生規則第552条」にもあるように、踊り場は、「建設工事に用いる登りさん橋が高さ8m以上になる場合は、7m以内ごとに設ける」こととなっています。
また一般の建物に関しても、「建築基準法施行令第24条」により、「高さが4mを超える場合は4m以内ごとに踊り場を設ける」こととなっています。
足場階段の踊り場は、最下層までの転落を防ぐだけでなく、建築材料を仮置きするためのスペースとしても有効に活用できます。
低層の住宅工事用足場では、足場階段を直線的に設けることが困難なため、あらかじめ踊り場がついていることがほとんどですが、現場によっては踊り場を付けないという選択をすることがあるかもしれません。
しかし、踊り場には重大な事故を防ぐ役割がありますので、取り付けるよう心掛けましょう。また、その際は、足場階段と同じく、高さ85㎝以上の手すりと中さん (高さ35㎝以上50㎝以下) 等を設置するようにしましょう。
まとめ
この記事では、足場階段の設置基準に関する法律等やポイントを詳しく解説しました。足場階段の設置基準に関わる法律等には、「労働安全衛生規則」や「足場先行工法のガイドライン」があり、以下のような取り決めがあります。
- 高さ(または深さ)が1.5mを超えるところで作業を行うときは、安全に昇降するための設備を必ず設置する
- 丈夫な構造のものを使う
- こう配が15°を超える階段には、踏さんその他の滑止めを設ける
- 高さ85cm以上の手すりを設ける
- 高さ35cm以上50cm以下のさん又はこれと同等以上の機能を有する設備を設ける
- 高さ8m以上の登りさん橋には、7m以内ごとに踊り場を設ける
- 階段の踏面は等間隔で、幅20cm以上、けあげ高さ30cm以下にする
これらの取り決めを守り、正しく足場階段を設置しましょう。また、足場階段と合わせて、足場階段の踊り場についても覚えておきましょう。
皆さまが足場階段や踊り場についての正しい基準を理解し、より安全に作業できるよう願っています。