ハーネスをつけて足場で作業する職人たちに、憧れを抱いた経験はありませんか?この記事では、足場職人を目指したい方に向けて、「足場職人の仕事内容」や「一日の仕事の流れ」、「必要な資格や能力」について解説していきます。これを読むことで、足場職人の仕事内容について具体的に分かり、自分に向いているか、そうでないかが分かるでしょう。
足場職人とは?
そもそも「足場職人」とは、どのような職人でしょう?足場職人とは、足場の組み立て・解体を専門にする職人のことです。一般住宅やマンション、ビルなど、建物のサイズや立地条件に合わせて足場を組み、作業が終わり次第、解体します。場合によっては、橋などに足場を組むこともあります。
足場の上で実際に作業をするのは、大工や設備職人です。
足場の良し悪しによって、他の職人の作業のしやすさも変わるため、足場職人には、効率よく安全性の高い足場を組むことが求められます。足場職人の行う仕事は、決して形に残りませんが、多くの職人を支える大切な仕事です。
足場職人ととびの違い
足場と聞くと「とび」をイメージする方も多いでしょう。実はそのイメージのとおり、「とび」=「高所の作業に携る人全員」のことを指します。したがって、足場職人もとび職の一つです。(そのため「足場とび」と呼ばれることもあります。)
人によって、「足場職人」「とび」「足場とび」とさまざまな言い方をしますが、ニュアンスはほとんど同じなので、呼び方の違いはあまり気にしなくてもよいでしょう。
足場職人の仕事内容
足場職人になりたての頃は、「組み立て・解体作業」に従事することがほとんどですが、キャリアアップしていくにつれ、担当する仕事内容も変化します。以下では、足場職人が行う仕事内容を一通り解説しますので、今後の参考にしてください。
現地調査・作業内容の確認
実際の作業に入る前に、足場を組み立てる対象の建築物と周辺環境を調べます。周辺環境に関しては特に都心において、建物同士の間隔が狭かったり、前面道路との間隔が狭かったりする場合があるので、入念に調査します。
また対象の建物に関しては「何のために足場を組むのか」をはっきりさせたうえで、最適な足場の組み方を考えます。外壁塗装のためなのか、新築の棟上げのためなのか、などによって足場の組み方を変え、作業者がベストな状態で作業できるようにします。
図面作成
現地調査の後は、足場図面を作成します。足場は、現地でいきなり組んでいく訳ではありません。詳細に図面化したものを見ながら、計画的に組み立てていきます。
足場図面は、躯体と足場との距離が特に重要です。さまざまな制約に則って、平面図・立面図・断面図を作成します。ちなみに、図面作成は、専用のソフトやアプリケーションを使用するのが一般的です。
拾い
作成した図面をもとに、足場に必要な部材を拾い出します。足場の工法は、「単管足場」「くさび式緊結足場」「枠組み足場」が主流ですが、それぞれの足場ごとに必要な部材が異なるので、きちんとした知識が必要です。
どの部材が、どれだけ必要なのかを、なるべく誤差の無いように拾い出していくことで、後々のトラブルを回避できます。
部材の手配・搬入
拾いが終わったら、部材の手配をします。自社で足場を保有している場合はこの作業は必要ありませんが、そうでなければ、足場レンタル業者等の外部業者に発注します。
自社の保有物でもレンタル品でも、搬入は自分たちで行います。ひとつひとつの部材は重量があるので、ケガをしないよう注意しながら搬入します。
また、部材同士がぶつかると非常に大きな金属音が鳴り響いてしまうので、丁寧に搬入します。現場に下ろした部材は、図面を見ながら必要な場所へ配置していきます。
組み立て
図面を見ながら、下部から順に足場を組み立てます。あらかじめ職長(現場監督)が足場を組むために必要な人数を決めているので、そのメンバーで作業します。足場の部材は重いので、無理せずに安全第一で組み立てます。
足場の組み立てが終わったら、大工や設備職人に現場をバトンタッチします。そして彼らの作業が完了するまで、しばらく現場を離れます。
解体・撤去
大工や設備職人の作業が完了したら現場に戻り、上部から足場を解体していきます。
解体作業なら、多少気を抜いてもよいと思うかもしれませんが、塗装ならば塗りたて、新築であれば新品の壁の状態であるため、組み立て時よりも気を張らなければなりません。
すでに作業を終えた大工や設備職人の仕事を無駄にしないよう、キズや汚れが付かないように、慎重に作業します。
解体が終わったら、現場から部材を撤去します。搬入したときと同様、油断しないように丁寧にトラックに積み込みます。また、帰路で荷崩れが起きないよう、きれいに積み込んでいくことも大切です。
片付け・清掃
解体・撤去作業が終わったら、現場の片付けをします。足場部材は小さいものも多いので、まずは周囲を歩き周り、残っているものがないか確認します。
それが終わったら、現場の清掃も行います。さまざまな人が作業した場所なので、ゴミが落ちているかもしれませんし、泥や土埃などでひどく汚れているかもしれません。最後に現場を去る者の責任として、しっかり清掃して帰ります。
足場職人の一日の仕事の流れ
次に足場職人の一日の仕事の流れを確認していきましょう。
※ここでは組み立て・解体作業をする場合の一日を想定しています。
7:30 出勤
建設現場に直接出勤し、着替えなどを済ませます。8:00 朝礼
全員で朝礼を行い、「KYミーティング」と呼ばれる危険予知のための話し合いをしてから、ラジオ体操を行います。8:45 作業開始
あらかじめ搬入しておいた足場部材を用いて、足場を組み立てていきます。10:00 小休憩
水分補給をするなどして15分ほど休んだあと、作業を続けます。12:00 昼食休憩
持参した弁当などで手早く昼食を済ませ、仮眠をとって体力回復に努めます。13:00 作業再開
引き続き、足場の組み立て作業を行います。15:00 小休憩
集中力を保ち、ケガを防止するために、小休憩をはさみます。16:30 片付け
日が暮れる前に作業を完了し、現場の片付けを清掃を行います。17:00 退勤
現場で解散し、自宅に直帰します。
(引用:キャリアガーデン)
ご覧のとおり、「KYミーティング」や小休憩をはさむなど、現場では安全管理が徹底されています。また、周囲が暗くなると危険なので、定時を越えて作業することはほぼありません。
足場職人になるための資格
足場職人になるために資格は必要なのでしょうか?実は採用時に必要な資格は特にありません。職歴や学歴もほぼ問われないので、やる気と相応の能力さえあればスタートできます。
したがって、最初は親方の手元として現場に入り、徐々に技術を覚えていきましょう。一通り技術を覚え、キャリアアップしたいと思ったときに、資格に挑戦すれば問題ありません。
以下では、キャリアアップ時に目指すべき資格と、それ以外で持っておくと便利な資格を紹介します。ぜひ今後の参考にしてください。
足場の組立て等作業主任者
「足場の組立て等作業主任者」は、職長になるために必要な資格です。国家資格のひとつで、足場の組み立て現場において安全管理を行います。3年の実務経験を経てから資格取得に挑戦できます。
鉄骨組立て等作業主任者
「鉄骨組立て等作業主任者」も、職長になるために必要な資格です。こちらも国家資格のひとつで、建築物の骨組みや、高さが5m以上である金属製の部材により構成されるものの組立て、解体などの現場監督・安全指導を行います。3年の実務経験を経てから資格取得に挑戦できます。
とび技能士
「とび技能士」は、とび作業の段取りから仮設建設物の組み立てと解体、掘削、土止めなど、とび職の仕事全般に関する技能を認定する国家資格です。3級から1級まであり、3級は誰でも受験できますが、2級は2年、1級は7年以上の実務経験が必要です。
最上級の1級に合格すると、上級者であることが証明されるため、一流のとび職人を名乗れます。また、現場の主任技術者として従事できたり、親方として独立開業できたり、職業訓練校で指導員として働けたりします。
玉掛け・フォークリフトなどの資格
足場の組み立て・解体現場では、資材を持ち上げるためにクレーンを使用する場合があります。したがって、玉掛けやフォークリフトの資格を持っていると、現場で非常に重宝されます。
普通自動車免許/中型自動車免許
足場の組み立て・解体現場は常に変わるため、幅広い範囲に資材を運ばなければなりません。そのため、普通自動車運転免許はもちろん、中型自動車免許も所持していると、現場で重宝されるでしょう。
足場職人に求められる能力
最後に、足場職人に求められる能力をご紹介します。主な能力は以下の3つです。
・コミュニケーション能力
・繊細さ
まず一番に求められるのが、体力と集中力です。重い部材を運び、組み立て、また運び…と、ほとんどが肉体労働なうえ、毎日この作業を続けなければなりません。
特に見習いの段階では、部材を運ぶことが主な仕事になるので、体力に自信のない人にはキツく感じるかもしれません。
また、一瞬の気の緩みが大きな事故につながるため、集中力も大切です。動くときは動く、休むときは休むといったアスリートのようなメリハリをつけられる人が、足場職人に向いているでしょう。
現場では、コミュニケーション能力も欠かせません。特に足場は、一人で組めませんから、常にチームワークを大切にし、声を掛け合って作業していく必要があります。また、些細なミスが人の命を奪うことにつながるので、分からないことをすぐに聞き、改善することも大切です。
最後に、繊細さも大切な能力です。太い作業着を着たとびのイメージから、「足場職人は荒々しくて大雑把な人が多い」というイメージがあるかもしれません。
しかし一流の足場職人は、非常に繊細で丁寧です。人の命がかかっていることも一つの理由ですが、近隣住宅の洗濯物や植木鉢、対象の家の壁などを汚したり、傷つけたりしないように作業することもとても大切なのです。
「このくらい大丈夫」という雑な考え方ではなく、慎重な性格の人の方が、足場職人に向いています。
まとめ
この記事では、足場職人の仕事内容や一日の仕事の流れ、足場職人になるための資格や求められる能力について解説しました。足場職人とは、足場の組み立て・解体を専門に行う職人のことであり、以下のような仕事を行っています。
- 現地調査
- 作業内容の確認
- 図面作成
- 拾い
- 部材の手配・搬入
- 組み立て
- 解体・撤去
- 片付け・清掃
足場職人の仕事には、足場の組み立て・解体といった肉体労働だけではなく、それに至るまでの事務的な作業も含まれていることを認識しておきましょう。
また、足場職人の作業内容は危険を伴うため、一日の仕事の流れはおおよそ決められています。動くときは動く、休むときは休むといったメリハリをつけて働ける人は、足場職人に向いていると言えるでしょう。
足場職人になるための資格は、採用時は必要ありませんが、キャリアアップするために必要です。また、中型自動車免許やフォークリフトの免許など、持っていると便利な資格もあるので、余裕があるときに取得すると、現場で重宝されるでしょう。
「今後足場職人を目指したい!」という方は、これらのことをしっかり理解し、大工や設備職人を影で支えるかっこいい足場職人になってください。