塗装工事や外壁工事などで欠かせない足場ですが、組み立てや解体に要する時間はどの程度必要なものなのでしょうか。
足場の組み立てや解体にかかる時間や、なぜ時間がかかるのかなどを徹底解説します。
組み立て・解体にかかる時間
足場の規模や、作業員人数にもよりますが、一般的な戸建てで作業員2~3人で組み立てるとすると、組み立てに約6時間~8時間程かかります。
朝8時に足場部材の搬入が完了していて、すぐに作業できるのであれば休憩時間を覗いて早くて17時ごろに完成するようなイメージです。
なので、足場の組み立てだけに1日以上は必要になります。
解体であれば、その半分の3時間~4時間程の時間で済みます。
解体時の注意点として、足場の解体後、外壁や車などにキズがある場合、トラブルになるケースが多々あります。
足場の組み立て前にキズを発見した場合は、施工主に連絡して把握して貰ったり、事前に写真撮っておくなどの対策が必要です。
また、解体も組み立て時と同様に騒音が発生するので、事前に説明するようにしましょう。
足場の組み立て工程
足場の組み立ては具体的にどのような工程を経て出来上がるのかを解説します。
一般的に多く使われている「ビケ足場」を例にとって見ていきましょう。
大まかな工程は次の通りです。
- 敷板(アンダーベース)を各所に配置
- その他の部材(支柱、手すり、踏板など)を近辺に配置
- ジャッキベースと敷板を組み合わせる
- ジャッキベースに支柱を差し込む
- 支柱と手すりを繋ぎ合わせる
- 踏板を取り付ける
- 支柱と支柱の間に筋交いを取り付ける
- (必要に応じて養生ネットを取り付ける)
手すりと支柱を繋ぎ合わせる作業がメインとなりますが、ビケ足場はハンマーで叩くことで比較的簡単に組み立てることができます。
しかし、組み立て中はハンマーと足場部材のぶつかり合う音が発生してしまうため、近隣住民へ事前に挨拶周りをする必要があります。
筋交いは、足場の強度を保持するために必要な部材です。
支柱と手すりだけでは、縦と横の柱のみの構造になってしまうため、風などの外的力を受けた時に足場が倒壊する恐れがあります。
そのため、斜め構造の筋交いを設置することで強度を保持します。
養生ネットは近隣住民や周りの建物などに水しぶきや塗料、粉塵などが飛散しないようにするために取り付けます。
台風などの風が強い日が予想される場合は、事前に養生ネットを畳み、風の影響を受けないようにして足場が倒壊しないように対策します。
組み立て・解体に時間がかかる理由
足場の組み立てや解体に時間がかかる理由は、作業員や近隣住民の安全を守るためです。
ただ足場を組み立てるだけであれば、3時間もあれば出来上がってしまうと思われますが、安全基準を守り、作業効率を考え、作業員の負担を考慮して組み立てると1日以上必要となります。
足場の組み立てには、「足場の組立て等作業主任者」と呼ばれる国家資格を持つ人が居なければ組み立てることができません。
足場の組立て等作業主任者の資格や、足場特別教育を受講せずに作業してしまった場合は、懲役6ヶ月以下または50万円以下の罰金を払わなければなりません。
これらは、安全を守るために労働安全衛生法で定められています。
労働安全衛生法
(作業主任者)
第十四条 事業者は、高圧室内作業その他の労働災害を防止するための管理を必要とする作業で、政令で定めるものについては、都道府県労働局長の免許を受けた者又は都道府県労働局長の登録を受けた者が行う技能講習を修了した者のうちから、厚生労働省令で定めるところにより、当該作業の区分に応じて、作業主任者を選任し、その者に当該作業に従事する労働者の指揮その他の厚生労働省令で定める事項を行わせなければならない。
引用:e-gov
第十二章 罰則
第百十九条 次の各号のいずれかに該当する者は、六月以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
一 第十四条
引用:中央労働災害防止センター
足場の組み立て・解体には国家資格が必要な程安全性が重要であり、簡単な作業ではないことが理解できると思います。
また、現場ごとに足場に必要な部品数が毎回変わるため、その場その場で段取りを組まなければなりません。
家の大きさで部材の数が違うのはもちろん、周囲の環境にも大きく左右されます。
草木やフェンスが外壁に隣接している場合や、隣の建物が密接している場合など、現場の状況に合わせて足場を組み立てるため、その分時間を要します。
草木やフェンスによりどうしても作業ができない場合は、撤去することもあります。
ただ足場を組めばいいというわけではなく、安全に、かつ現場の状況に合わせて組み立てるという理由から、足場の組み立てや解体には時間を要します。
組み立て・解体の時間を短縮する方法
組み立て・解体に時間を要するといっても、作業員の経験や熟練度によってその時間は異なります。
段取りが悪かったり、必要な作業を見落としてしまったりした場合は時間が余分にかかります。
段取りが良く、熟練度の高い作業員は、現地調査に行った際に以下のことを意識しています。
- メジャーなどを使って細かく採寸し、周囲の環境を把握する
- 目的と周囲の環境に合わせた足場部材数を想定する
- 当日の具体的な組み立て方法、足場の仮置きスペースを考える
- 足場の積み方、運搬方法、到着時間、組み立て時間を考える
これらの段取りを経験と照らし合わせ、最大限準備を行い、工程通り無事に作業を終えることができれば、熟練度の高い作業員と言えるでしょう。
しかし、一概に作業員の熟練度次第というわけではありません。
天候が悪かったり、風が強い日の場合は安全を考慮して工程を伸ばす場合があります。
雨の日、風の日に作業してしまうと、安全を十分に守ることができません。そのため、梅雨の時期や雪の降る時期は、足場の組み立て・解体に時間がかかることを想定しておくとよいでしょう。
他にも、近隣住民の理解が得られない場合や、隣の家と密接している場合は、組み立てに時間がかかる場合があります。
スペースを確保できない場合、隣の家の敷地を借りなければならない時があります。
そのため、その許可を貰うのに時間がかかったり、最悪の場合は足場を組み立てられないという場合があります。
このように、天候や、周囲の環境によっても左右されるため、足場の組み立て時間は一概に作業員の熟練度だけではないことが理解できると思います。
まとめ
足場の組み立て・解体の所要時間、日数について解説いたしました。
- 足場の組み立ては、一般的な戸建てで作業員2~3人で組み立てるとすると、約6時間~8時間程かかります。
- 足場の解体は、組み立て時間の半分の3時間~4時間程の時間で済みます。
- 足場を組み立てる前に、近隣住民へ事前に挨拶周りをする必要があります。
- 足場の組み立てや解体に時間がかかる理由は、作業員や近隣住民の安全を守るためです。
- 足場の組み立てには、「足場の組立て等作業主任者」と呼ばれる国家資格を持つ人が居なければ組み立てることができません。
- 足場の組み立て時間は、作業員の熟練度によって違いますが、天候や周囲の環境によっても左右されます。
足場の組み立て・解体時間の目安や理由を理解し、足場工事に役立ててください。