工具や資材などの落下を防ぐ防護柵として足場工事に用いられる「朝顔」。ここ最近の安全対策措置の義務化を受けて、この朝顔の使用を検討し始めた方も多いのではないでしょうか。当記事では、そんな方に向けて、朝顔の「取り付け手順・組み立て方法」を分かりやすく解説していきます。そのほか「朝顔の設置基準」や「設置の際の注意点」などについても解説しますので、ぜひお役立てください。
落下物に対する防護基準と朝顔の関係性
そもそも我が国では、「工事現場の落下物に対する防護基準」をどのように定めているのでしょうか?また朝顔は、どの現場も取り付けなければならないのでしょうか?以下ではそんな疑問について解説していきます。
落下物に対する防護基準
日本では「建築基準法」において、落下物に対する防護対策をとることが規定されています。詳しい基準は以下のとおりです。
建築工事等を行う場合において、建築のための工事をする部分が工事現場の境界線から水平距離が5m以内で、かつ、地盤面から高さが7m以上にあるとき、その他はつり、除却、外壁の修繕等に伴う落下物によって工事現場の周辺に危害を生ずるおそれがあるときは、国土交通大臣の定める基準に従って、工事現場の周囲その他危害防止上必要な部分を鉄網又は帆布でおおう等落下物による危害を防止するための措置を講じなければならない。
(「建築基準法施行令第136条の5第2項」より)
防護器具の無い足場で、工具や部品を落としてしまった場合、通行人にケガを負わせたり、通行人を死亡させたりすることは、絶対にあってはならないことですよね。したがって足場工事を行う際は、鉄網や帆布で覆うなどして、何かしらの「落下防止対策」を講じ、人的被害を起こさないよう努めなくてはなりません。
また国土交通省が策定した「建設工事公衆災害防止対策要綱」においても、落下物に対する安全対策を行うようしっかりと明記されています。
落下物に対する防護基準と朝顔の関係性
先述のように、足場工事の際は「何かしらの落下防止対策」を講じる必要があります。したがって、必ずしも朝顔でなけでばダメ!ということはありません。
現場に応じて【メッシュシート・垂直養生ネット・防音パネル・ネットフレーム ・防護棚(朝顔)】 を使い分け、第三者の命を守ること大切です。(参考:足場に係る 改正労働安全衛生規則等について)
朝顔の設置基準
朝顔の設置基準は、以下のように定められています。必ずこれらの基準を守って設置するようにしてください。
- 地上から10m以上の足場では1段以上、20m以上の場合は2段以上取付ける
- 1段目は地上から10m以内(一般には4~5m)に設け、2段目以降は下段の朝顔から10m以内に設けること
- 朝顔のせり出しの長さは足場から水平方向に2m以上とし、水平面に対する傾きは20度以上必要
- 取付位置は立枠の横架材のところとし、壁つなぎを2スパン毎朝顔の上下段に設けること
- バンノ―板はすき間なく(やや重ねながら)全面に張ること
朝顔の1段目は地上から10m以内(一般には4~5m)に取り付けることになっていますが、この高さに電線等があり、取り付けられない場合もあります。その場合は、さらに低い場所に取り付ける努力をしなければならないことを認識しておきましょう。
朝顔の設置方法と注意点
朝顔にはさまざまな種類がありますが、以下では朝顔の基本的な形である「鋼製朝顔」の組み立て方法について解説していきます。注意点も合わせてお伝えしますので、設置の際の参考にしてください。
朝顔の取り付け手順・組み立て方法
朝顔の取り付け手順・組み立て方法は以下のとおりです。
- フレーム受け金具、斜材受け金具を建枠の横架材に取り付ける
・ハンガーを横架材に乗せたら、下部を抜け止めピンを挿し、上部をクランプで固定する・その一層上の横架材の上に、①と同じ手順でフレーム金具を取り付ける - フレームと斜材を取り付ける
・斜材のスライド管を引き伸ばし、ボルトで固定・斜材についているピンでフレームと連結し、フレームの先端にロープを取り付ける - フレームと斜材をセットしたものを取り付ける
・②でセットしたフレームと斜材を、足場上からロープで引き上げ、斜材先端を斜材受け金具のチャンネルの中に差し込む・フレームとフレーム受け金具をボルト・ナットで固定 - バンノー板受けを取り付ける
バンノー板受け上、バンノー板受け下を順次取り付ける - フレ止め材を取り付ける
フレ止め材を1スパン毎に2本ずつ取り付ける - バンノー板を取り付ける
バンノー板の先端をバンノー板受け(上)に取り付け、バンノー板の下端をバンノー板受け(下)へ取り付ける - バンノー板押えを取り付ける
ピンを差し込んで固定する - 朝顔の角度を調節する
ロープを左右均等に緩めながらフレームを前方に倒す - 斜材の吹き上げ防止のボルトを取り付ける
- ①~⑧の手順を全スパンで繰り返す
※動画で視聴したい方はこちらをご覧ください>>アサガオ組立て手順
最近では、付属のマニュアルで簡単に組み立てられる「キット化」された朝顔も登場しており、そちらを使用すると工期を短縮できます。
朝顔を設置する際の注意点
第三者への危害を防止する朝顔ですが、組み立て時に安全を損なってしまっては本末転倒です。抑えるべき注意事項を覚えて、人的被害を起こさないように努めましょう。
- 朝顔の組立、解体においては、足場の組立作業主任者を専任し、墜落防止用器具の着用など労働安全衛生規則を順守して作業を行うこと
- 使用前に製品の異常がないか確認すること。万一、異常があるときは絶対に使わない
- 組立前に部品(ボルト、ネジ等)の抜け落ちがないか確認すること。部品の抜けがあった場合は必ず補充してから組み立てを行うようにする
- 朝顔フレームの組み立て、解体にはロープを用いて作業を行うこと
- 設置された朝顔の上には乗らないこと
- 強風時は朝顔を起こし、フレームをロープで建枠に固定すること
- バンノー板は全面に隙間なく張り、せり出し幅不足にならないよう角度を調節すること
上記の注意点で特に気を付けたいのがせり出し幅の不足です。「朝顔の設置基準」でもお伝えしたとおり、フレームが足場から水平方向に2m以上せり出していないと、物が落ちた時にフレームを飛び越えてしまう可能性があるので注意しましょう。
まとめ
我が国では、「建築基準法」において、落下物に対する防護対策をとることが規定されています。すべての現場で同じものを使用しなければならない訳ではなく、現場に応じて【メッシュシート・垂直養生ネット・防音パネル・ネットフレーム ・防護棚(朝顔)】から選んで使用します。
防護対策のひとつである朝顔には、以下のような設置基準があります。
- 地上から10m以上の足場では1段以上、20m以上の場合は2段以上取付ける
1段目は地上から10m以内(一般には4~5m)に設け、2段目以降は下段の朝顔から10m以内に設けること - 朝顔のせり出しの長さは足場から水平方向に2m以上とし、水平面に対する傾きは20度以上必要 など
必ずこれらの基準を満たすように、組み立て・取り付けを行うようにしましょう。もしも設置基準を満たしていない場合、監督署がその現場を確認することになります。正しい設置方法で、自分たちだけでなく、第三者の命も守れるように努めましょう。