足場工事で度々使われる「朝顔」をご存じでしょうか?
前半では、朝顔とはいったい何なのかを、正式名称から組立の方法や注意点を紹介します。
後半では、朝顔にはどんな種類があるのかを、使われている部材からそれぞれの特徴まで紹介いたします。
朝顔とは?
朝顔とは、人の転落や、工具などの落下を防ぐ防護柵のことです。
足場工事では、道路に面した建物の建設や解体作業を行うことがあります。作業中に誤ってボルトや工具を落下させてしまい、通行人に当たってしまうと重大事故に繋がる可能性があります。
通行人にとっても大事な安全対策ですが、作業員にとっても大事な安全対策のひとつです。
実は、労働災害による死亡者数で、毎年トップの原因が「墜落・転落」です。
部材が古くなっていることに気付かずに使用し、破損して転落してしまったり、突然の悪天候により足場を踏み外してしまって転落してしまうなど、きっかけはさまざまです。
それらの危険を未然に防ぐためにも、朝顔と呼ばれる防護柵が必要です。
朝顔の正式名称
朝顔の正式名称は「防護柵」です。
他にも「鉄網」や「落下防止器具」と呼ぶ場合もあります。
正式名称は防護柵ですが、「国土交通省の仕様書に基づいた足場等の安全対策」を見ると、「防護柵(朝顔)」と記載されていますので、朝顔でも問題なく意味が通ります。
朝顔と呼ばれる理由
では何故朝顔と呼ばれているのでしょうか。それは、防護柵の姿が花の「アサガオ」に姿が似ているからです。
例えば、作業中にボルトが落下した時、防護柵が水平ではボルトが転がり落ちてしまいます。なので、水平よりも上向きに傾斜をつける必要があります。
傾斜をつけたその姿が、アサガオの花弁に似ていることから、建設業界では朝顔と呼ばれるようになりました。
朝顔の基本的な組立方法と注意点
組立方法
朝顔にはさまざまな種類がありますが、基本的な形である鋼製朝顔の組み立て方を紹介します。
①フレーム受け金具と斜材受け金具を取り付ける
それぞれ建枠の横架材にハンガーをかけ、クランプで固定する
②フレームと斜材を取り付ける
取り付け終わったら斜材を調整する
③フレームと斜材をセットしたものを取り付ける
上からロープを使って足場を引き上げる
④バンノー板受けを取り付ける
バンノー板受け上、バンノー板受け下を順次取り付ける
⑤フレ止め材を取り付ける
フレ止め材を1スパン毎に2本ずつ取り付ける
⑥バンノー板の取り付ける
バンノー板の上端をバンノー板受け上に取り付け、バンノー板の下端をバンノー板受け下へ取り付ける
⑦バンノー板押えを取り付ける
ピンを差し込んで固定する
⑧朝顔の角度を調節する
ロープを使って角度を調整し、ボルトで固定する
①~⑧の手順を全スパンで繰り返す
組立時の注意点
安全性を高める朝顔ですが、組立時に安全を損なってしまっては本末転倒です。
朝顔を支持していたクランプが単管から外れて朝顔が崩落したり、朝顔のコーナー部分で作業していた人が落下するなど、朝顔設置中に発生する事故も少なくありません。
こちらでは、朝顔を組立てる時に抑えるべきポイントを紹介します。
注意事項を覚えて、労働災害防止に努めましょう。
・使用の前に部品の抜け落ちがないか、製品の異常がないかを確認して下さい。部品に抜け落ちがある場合は補充し、製品に異常がある場合は絶対に使わないようにして下さい。
・足場の組立作業主任者を選任し、労働安全衛生規則を遵守して作業して下さい。高所では墜落防止用器具を着用して下さい。
・設置済みの朝顔には乗らないようにし、強風時は朝顔を起こし、ロープで固定して下さい。
・バンノー板は全面に隙間なく張り、せり出し幅不足にならないよう角度を調節して下さい。
朝顔の種類
足場に種類があるように、朝顔にも種類があります。
安全対策はもちろん、作業の効率化や作業中の景観などを意識して作られた朝顔が、各社から販売、リースされています。
従来の「鋼製朝顔」、軽量化した「アルミ朝顔」、さらに軽量化させた「シート朝顔」を紹介いたします。
それぞれの現場に合わせて適切な朝顔を選びましょう。
鋼製朝顔
アサガオ組立式防護柵
【部材】
直線部:主材、つり材、パネル、フレ止め、主材クランプ、つり材クランプ、スライド管、滑車、ロープ
コーナー部:コーナー主材(左右)、センター主材、パネル受け(左右)、パネル、パネル押え、フレ止め、コーナー主材クランプ、コーナー吊材クランプ
【特徴】
防護柵が足場板と同じ形状をしているため、強度があります。それに加えて主材やパネルなどは溶解亜鉛鋼金仕上げなので、工具やボルトを落として、突き破るということはまずありません。
また、構造がシンプルで、専用の工具や道具を必要とせずに作業出来ます。
参考:長崎県建設工業協同組合
SKアサガオ
【部材】
直線部:アサガオ主材、バンノー受けC型、バンノー鋼板、バンノー受けL型、フレ止め、バンノー押え、アサガオ斜材、スライド管、主材取付金具、斜材取付金具
コーナー部:センター主材、コーナー主材、パネル、フレ止め、センターフレーム、コーナーフレーム、主材取付金具、斜材取付金具、センタースライド管、コーナースライド管
【特徴】
従来、枠組足場に取付するアサガオの組立や解体は、足場の外側へ身を出し、空中で作業しなければ設置出来ないものが多かったのですが、組立から解体まで全ての作業が足場の内側で完結出来るようになりました。
また、安全を突き詰め、アサガオ本体を上部吊材で吊る方法を廃止し、下側から支持パイプを設けて主材を支える方法に変更しました。それにより、上側開口部は全開状態になり、上部吊材に落下物が跳ね返って外側に落ちる危険性を無くしました。
構造もシンプルに設計されており、本体を支える斜材が各スパン事に独立しています。そのため、クレーンで荷揚げする場合などに邪魔にならないよう、必要なスパンだけを折り畳むことが出来ます。
参考:長崎県建設工業協同組合
Smart アサガオ
【部材】
本体フレーム、斜め材、斜め材受け、30t FRP波板
【特徴】
FRPの波板を採用し、部材点数が圧倒的に少ないので、施工が簡単です。折り畳むことも出来るので運び出しも簡単です。
耐久実験では、重さ13.3kg、長さ3,600mmの支柱を受け止めることが出来ると実証されました。クランプなどの小物部品ではパネルの破損も無く、跳ねだすこともありません。
4段階の角度調整が可能で、1スパン毎の折り畳みも可能なので、荷揚げ時にクレーンの邪魔になることもありません。
参考:平和技研株式会社
簡易アサガオ
【部材】
簡易アサガオブラケット、踏板押え、踏板
【特徴】
足場からの出幅が約1mの落下物養生材です。足場の高さが10m以上の場合は出幅が水平面で2m以上なければなりませんが、10mに達しない場合は朝顔の設置義務はありません。なので、小規模の工事で安全を考慮して朝顔を設置したいのであれば、こちらの簡易型の朝顔も使用出来ます。
部材点数が圧倒的に少ないため、運搬や組立、解体を効率的に行うことが出来ます。
参考:株式会社ダイサン
アルミ朝顔
アルミ製軽量アサガオ
【部材】
直線部:フレームL+斜材、フレームR+斜材、万能板受け(上)、万能板受け(下)、万能板押え、振れ止め、フレーム受け金具、FRP万能板
コーナー部:隅サイドフレームLR、隅センターフレーム、隅万能板押え(上)、振れ止めA、振れ止めB、隅フレーム受け金具、隅斜材受け金具、斜材、FRP製万能板(小)、FRP製万能板(中)、FRP製万能板(大)、妻側フレーム受け金具、妻側斜材受け金具
【特徴】
フレームの材質は鉄の約3分の1の比重であるアルミを使用し、バンノー板には軽量で強度のあるFRP(繊維強化プラスチック)を使用しています。なので、従来の鋼製朝顔に比べて可動部約40%の軽量化を実現しました。
スパン毎に独立しており、クレーンなどで荷揚げする際も、必要なスパンだけを折り畳むことが出来ます。
朝顔本体を下から支えているため、上部は全開状態です。そのため、落下物が吊材に当たって跳ね出す心配はありません。
水色のFRP製バンノー板により、見た目が明るく、景観にも配慮しています。
また、空中での組立・解体作業が無くなり、折り畳み式により作業を2人で行えます。
参考:アルインコ株式会社
シート朝顔
シート朝顔
【部材】
直線部:上枠、堅枠+シート、下枠、主材受け金具、斜材受け金具、斜材
コーナー部:シート本体+主材受け金具、コーナー斜材受け金具、斜材
【特徴】
従来の朝顔から発想を転換し、仕組みそのものを変更し、軽量化と作業の効率化を図りました。組立てる時間は従来の半分に短縮。部材点数の半減により組立て時の安全性も向上しました。
また、機材センターでの在庫管理も簡素化され、運送効率も良くなり、利便性の向上につながりました。
シートはネットとの4層構造により安全性を確保(仮設工業会承認基準をクリア)すると共に、景観を崩さない青色を使用しています。
組立、解体作業時に使用されるボルトは「落下防止対策ボルト」を使用。それにより、フレーム本体に繋がったワイヤーがボルトの落下を未然に防ぎ、安全性を向上させています。
参考:株式会社タカミヤ
次世代防護柵
【部材】
直線部:本体フレーム+斜材、上部フレーム、下部フレーム、アサガオ用強化シート、上部金具、下部金具
コーナー部:コーナーフレームL+斜材L、コーナーフレームR+斜材R、センターフレーム+コーナー用強化シート、コーナー上部金具、コーナー下部金具
【特徴】
フレームは高張力鋼と呼ばれるハイテン鋼を使用しています。それにより、普通鋼と比べて86%も強度が向上しています。さらに18kgの建わくを10mの高さから落とすという実験を行ったところ、シートを突き破ることは無く、水平面に対して30度の角度がついているため、外に出ることもありませんでした。
軽量かつコンパクトなので、運搬や保管コストを低減させることが出来ます。
また、エアスルーと呼ばれる強風対策用の製品も販売されており、シートがメッシュ状になっていて、風の抵抗を受けにくい仕様になっています。
参考:東阪工業株式会社
まとめ
朝顔とは、工具や部品の落下、作業員の墜落、転落を防ぐ防護柵のことです。
組立方法や、組立時の注意点も含めてご紹介いたしましたので、朝顔とはどのようなものなのか、概要を分かっていただけたかと思います。
また、朝顔の種類「鋼製朝顔」、「アルミ朝顔」、「シート朝顔」の必要な部材や特徴についてそれぞれご紹介いたしました。
朝顔は、10m以上の足場を組む時は必ず必要になります。安全に考慮し、正しい方法で朝顔を使用しましょう。