足場工事において、10m以上の足場に必ず設置しなければならないのが「朝顔」と呼ばれる防護柵です。
朝顔は、法律で定められた基準に沿って設置しなければなりません。
また、道路に隣接している現場では道路の使用許可を取らなければならない場合があります。
本記事では、朝顔の設置基準と、道路の使用許可について徹底的に解説いたします。
朝顔の設置基準
朝顔に関する建築基準法とポイント
内閣が制定する、建築基準法施行令は次の通りです。
建築基準法施行令
(落下物に対する防護)第百三十六条の五
2 建築工事等を行なう場合において、建築のための工事をする部分が工事現場の境界線から水平距離が五メートル以内で、かつ、地盤面から高さが七メートル以上にあるとき、その他はつり、除却、外壁の修繕等に伴う落下物によつて工事現場の周辺に危害を生ずるおそれがあるときは、国土交通大臣の定める基準に従つて、工事現場の周囲その他危害防止上必要な部分を鉄網又は帆布でおおう等落下物による危害を防止するための措置を講じなければならない。
引用元:国土交通省
要約すると、以下の通りになります。
- 工事現場の周囲に危害が及ぶ可能性がある場合は、危害を防止するための措置を講じなければならない
- 国土交通大臣の定める基準に従わなければならない
つまり、基準に従って危険防止に努めなければならないと、法律で決まっているということがわかります。
朝顔に関する通達文とポイント
では、朝顔に関して国土交通大臣が定める基準とは何なのでしょうか。
こちらは1967年11月20日の建設省の通達文です。
(建設省は2001年に国土交通省に再編されています。)
建設工事等の工事現場における落下物による危害を防止するための措置に関する指導基準
建設工事等の工事を行う部分が、地盤面から10m以上の高さにある場合は、落下物による危害防止上必要な部分の周囲に次の各号に 定めるところにしたがって防護棚を1段以上、建築工事等の工事を行う部分が20m以上の高さにわたる場合には2段以上設けなけれ ばならない。
(1) 防護棚は、次のイ及びロに適合するものでなければならない。
イ 板状のものですき間がないこと。
ロ 木板にあっては、厚さが1.5cm以上、金属板等その他の材料にあっては、これと同時以上の効力を有する厚さであること。
(2) 防護棚は、次のイ及びロの定める方法によって取り付けなければならない。
イ 骨組の外側から水平距離で2m以上突出させ、水平面となす角度を20度以上とすること。
ロ 風圧、振動、衝撃等で脱落しないよう骨組に堅固に取り付けること。
(3) 最下段の防護棚は、建築工事等の工事を行う部分の下10m以内の位置に設けなければならない。引用元:WIKISOURCE
要約すると、以下の通りです。
- 工事を行う部分が10m以上高ければ1段以上、20mであれば2段以上必要
- 水平面で2m以上突出させ、水平面となす角20度以上必要
このように、法律で定められた基準に沿って朝顔を設置することが大切です。
また、朝顔の角度をつけ過ぎてしまうと、せり出し幅が2m以内になり、基準に満たなくなってしまう場合があるのでご注意下さい。
例えば、朝顔はさまざまな種類がありますが、通常のバンノー鋼板(2,350mm)で防護柵を作る場合を考えてみます。
朝顔の角度が、水平面となす角20度であれば、せり出し幅は2,208mmとなり、基準の2mを超えているので問題ありません。
しかし、朝顔の角度をつけ過ぎてしまい、35度になってしまうと、せり出し幅は1,925mmとなり、基準の2mを下回ってしまいます。
設置基準に達していないことが発覚してしまうと、会社や事業主に罰則が与えられる場合があります。
せり出し幅不足には十分注意しましょう。
道路の使用許可
足場工事で朝顔を使用する際、朝顔が道路にはみ出してしまう場合は使用の許可を取らなければなりません。
具体的には、「道路使用許可」と「道路占用許可」の2つです。占用の許可基準も加えて解説いたします。
道路使用許可
朝顔設置の道路使用許可は、3種類の書類を、道路を管轄する警察署に提出しなければなりません。
①朝顔の道路使用許可
②朝顔の搬入車が駐車するための道路使用許可
③朝顔の搬出車が駐車るすための道路使用許可
警察署によっては①の道路使用許可のみで通ることもあります。
必要書類
現況道路及び周辺見取図、工程表、保安図、交通量調整結果、迂回路略図、広報対策資料
管轄する警察署によって必要な書類が変わります。
道路占用許可
道路占用とは、道路上や、道路の上空、地下に工作物などを設置し、道路を使用し続けることを言います。
道路使用とは別で、その道路の管理者である国や都道府県などに道路占用許可を申請しなければなりません。
道路の占用とは言え、全ての範囲を使用することは出来ません。また、道路使用許可と違い、許可証が発行されるまで数週間かかります。
道路占用許可申請の流れ (東京都練馬区の場合)
①区役所にて道路占用申請 (仮受付)
②警察署にて道路使用許可申請
③道路使用許可が下りる
④区役所にて道路占用申請 (本受付)
⑤金融機関にて占用料の納付
⑥区役所にて許可証受領
必要書類は以下の通りです。
案内図、平面図、断面図、現況写真
(道路の管理者によって必要な書類が変わります)
占用料の算出方法 (東京都練馬区の場合)
占用料は以下の式で算出されます
[ ①占用面積(㎡) ✕ ②単価(円/㎡) ✕ ③期間(月) = 占用料 ]
①占用面積
占用面積は出幅✕長さで計算し、㎡で算出します。小数点以下は切り上げて整数とします。
占用範囲が複雑な場合でも、三斜計算で面積を算出する必要があります。
②単価
1年間使用した場合の単価が定められています。
足場、仮囲い:20,300円/㎡
朝顔:7,200円/㎡
③期間
上記の②単価を、占用する月数で割って期間を計算します。
期間が1ヶ月に満たない場合は1ヶ月分の占用料がかかります。また、占用する期間が年度末を跨ぐと少し複雑です。
例えば、占用する期間が2月10日~5月9日だった場合は以下の計算になります。
2月10日~3月9日 1ヶ月分
3月10日~3月31日 1ヶ月分
4月1日~4月30日 1ヶ月分
5月1日~5月9日 1ヶ月分
計 4ヶ月分
3月31日で締めなければならず、1ヶ月未満は1ヶ月分の占用料がかかってしまうため、実際は3ヶ月しか占用してなくても、年度を跨ぐので4ヶ月分かかってしまうのでご注意ください。
占用許可基準
道路の占用許可基準は以下の通りです。
道路占用許可基準及び道路占用物件配置標準
三十三 足場、仮囲い等の占用
家屋、しよう壁等の工事に伴う足場、仮囲い、落下物防護用施設(朝がお)の占用については、次の各号に掲げるところによらなければならない。
(一) 歩道を有する道路では、歩道上とし、その出幅は路端から一メートル以下で有効幅員の三分の一以下とすること。歩道を有しない道路では、路端から一メートル以下で、道路幅員の八分の一以下とすること。ただし、落下物防護用施設物については、必要な出幅とすることができる。
(三) 落下物防止用施設については、その高さは、歩道上では四メートル以上、歩道を有しない道路では五メートル以上とすること。
引用元:東京都道路占用規則
要約すると以下の通りです。
・朝顔の場合、1m以下かつ全体の1/3以下かつ歩道に1.5m以上の余地があることという条件をクリアしてせり出し幅を確保出来る
・朝顔の高さは歩道上で4m以上、歩道でなければ5m以上必要
朝顔に関しては、せり出し幅が足りないと逆に危険ですので、占用の基準をクリアすることが出来ます。
しかし、足場自体の占用許可基準がクリアされるわけではないのでご注意ください。
例えば、歩道が3mで、1m幅の植木が歩道上に生えていた場合、歩道3mの1/3である1m占用して良いわけではなく、植木を幅を抜いた2mの1/3なので、66cmしか占用出来ません。
また、点字ブロックが設置されている場合、点字ブロックから30cm離さなければならないため、さらに注意が必要です。
まとめ
朝顔を設置するにあたり、明確な基準が法律で定められていることをわかって頂けたかと思います。
朝顔が歩道や車道にはみ出る場合は、「道路使用許可」と「道路占用許可」が必要です。また、道路占用許可申請の流れ、占用料の計算方法も解説いたしました。
朝顔の設置基準、朝顔の占用基準は以下の通りです。
- 工事を行う部分が10m以上高ければ1段以上、20mであれば2段以上必要で、水平面で2m以上突出させ、水平面となす角20度以上必要
- 朝顔の場合、1m以下かつ全体の1/3以下かつ歩道に1.5m以上の余地があることという条件をクリアしてせり出し幅を確保出来る
- 朝顔の高さは、歩道上で4m以上、歩道でなければ5m以上必要
朝顔の設置基準についての解説は以上になります。現場の状況をしっかり確認し、正しい基準に沿って朝顔を設置しましょう。
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